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秀吉は「背伸び」すればとどくが、信長はとどかない?!

 

 社員や部下が成長するためにどうやって仕事をふればよいかと悩んでいる社長様や管理職の方がいらっしゃいます。私の知り合いのある中小企業の部長さんもたまに飲むと「部下が思うように仕事の成果を出してくれない」と良くグチをはかれます。この悩みは特に新入社員や若い社員にたいしてのものが多いようです。

 この「社員や部下が思うように成長をしてくれない」と言う悩みは企業が存在すれば必ずと言って良いほど課題としてあがっているものであり、トップや管理する側としてはある意味永遠と言って良いかも知れません。

 この問題の原因は1つではなく複合的な要素を含めたものですが、その1つを上げるとしたらそれは社長や管理職と社員や部下の間にある「成長のスピードの距離感」があります。つまり社長や管理職の「出来るだけ早く戦力になってほしい」と言う思いと社員や部下の「成長するスピード」がずれているのです。

 分かりやすく階段で例えれば、上司は「2段とばし」を求めますが部下は「そんなの無理だよ。1段ずつじゃないと」と言うイメージになります。そしてこの「1段」と言うのは部下1人1人にとって違うのです。

 これは私も良く経験をしました。違和感を感じていました。比較的若い部下を複数人受け持っていた時期がありました。私としては「早く成長してほしい」「仕事を1日も早くおぼえてほしい」との思いで矢継ぎ早に仕事をふりますが部下がなかなかそれに応えてくれない。もどかしさもあり1人でイライラしている時もありました。

 

信長と秀吉の目標設定の違いとは?

 

 そんな中ふと立ち寄った書店で立ち読みした信長と秀吉の本の中にそのイライラの原因を偶然見つけたのです。信長と秀吉の仕事のふり方には大きな違いがあったのです。それが先ほど例に出した「2段とばし」と「1段1段」です。

 これは言いかえると「ストレッチを考えているか」と言うことになります。「ストレッチ」は「筋肉をのばす」と言った意味がありますが、これを背伸びとするならば背伸びをして「届く」か「届かない」かの目標の設定と言うことになります。

 つまり人の成長に重要なのは「背伸びをしたくらいでちょうど届くくらいの程よいストレッチ目標」なのです。先ほどの2人で言えば性格でお分かりかと思いますが、信長は「過度のストレッチ」であり秀吉は「適度なストレッチ」と言うことになります(これは信長の方法が全面的に悪いと言っている訳ではありません。この点は又別のコラムにて取り上げさせていただきます)。

 私の例で言えば、「まだ仕事を始めたばかりの若い部下が多かった」のであれば私は「信長」よりも「秀吉」の方法で部下を育成するべきだったのです。それを結果をあせる気持ちから部下がいくら背伸びしても全く届かない「2段・3段とばし」の仕事を与えていたのです。

 社長や管理職が部下に仕事をまかせる時に心がけるべき点はここにあります。目標(ゴール)から逆算しその節目にマイルストーンを設定する。ですがこのマイルストーンが大ざっぱで適度になっていない場合、私や信長のような状態を引き起こしてしまいます。極論を言えば部下1人1人に合わせたマイルストーンを設定し、各部下に合った「ストレッチ目標」を与えることが必要なのです。

 信長は「2段とばし」の目標設定が非常に多かったと言います。これは信長自身がある意味先天的な天才性を持っており「自分が出来るから誰でも出来るだろう」と言う気持ちで家臣に仕事をまかせた部分もあったと思われます。

 これによってその「2段とばし」の目標設定を泣きながらでも努力してクリアしていく力を持っていた秀吉や明智光秀はあっと言う間に成長し大きく飛躍するきっかけとなりましたが、逆に林通勝や佐久間信盛と言った家臣はついていけず最終的には信長の怒りを買い追放されると言う結末をむかえてしまっています。

 これに対し秀吉は彼得意のコミュニケーション力で家臣1人1人の能力を見極め、黒田官兵衛や蒲生氏郷等器用で飲みこみが早い家臣には「2段・3段とばし」の仕事を与えて一気にその能力を開花させ、逆に石田三成のような不器用で若い家臣にはしっかりとした「1段1段」の仕事をていねいに与えることで時間をかけて育成していきました。

 ここまで述べてきたことをまとめれば部下を育成する理想の仕事の与え方は信長と秀吉の「いいとこ取り」となるでしょう。成長が早い部下にはより「ストレッチが大きい」目標(これが受ける部下側から見ればほど良い背伸びと言うことになります)を、逆に成長が遅い部下には「ストレッチが小さい」目標を与えることが重要と言うことです。

 ぜひ部下1人1人の成長スピードを見きわめ、1人1人に合った「ストレッチ目標」を設定し与えることで、部下の成長を促進させましょう。