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年上の部下と良好な関係をきずき活かしきる3つの接し方

 

「年上の部下が言うことを聞いてくれなくてイライラしている!」

「年齢的にこちらが下なのでつい年上の部下に遠慮がちになってしまう」

あなたはこう言ったなやみはありませんか?

年功序列の「終身雇用制度」が崩壊した現代では、今まで上司だった年上の先輩がいきなり自分の部下になったと言ったことは普通に起こりえることになっています。

ましてや「中途入社」の社員が多い中小企業では特にめずらしいことではありません。

年上の部下は「いまさら年下の上司に素直にしたがえない」、年下の上司は「なんとか年上の部下に自分の指示にしたがってほしい」となかなか相いれない両者の思いや目的がある中、年下の上司としてはどのように接し年上の上司を活かせば良いのか、今回はその3つのポイントをご紹介します。

 

1、上司と部下の上下の関係ではなく、ただの役割だと認識する

 

年上の部下と良好な関係をきずき活かしきる1つめのポイントは「上司と部下の上下の関係ではなく、ただの役割だと認識する」です。

年下の上司が年上の上司と接したり指示を出したりする時は、他の部下以上に「年齢差」や「私情」を排除することを心がける必要があります。

なぜなら、その「年齢差」や「私情」が年上の部下との関係をこじらせ、悪い状態にむかわせる元凶になるからです。

たとえば年下の人間から友達口調(タメ口)で話しかけられたりした時にイラっとした経験はないでしょうか?

人は「頭で考えることと心は別もの」であり、たとえ頭では冷静になろうと心がけたとしても、心では「なまいきなやつ」と言う感情をどうしてもいだいてしまいますが、それは「上司と部下」と言う関係であってもまったく同じことなのです。

むしろ年上の部下が「上司だからしたがわなくていけない」と自分に言い聞かせようとすればするほど心では反発する気持ちがふきだし、「年下の上司にしたがいたくない」と言う感情をいだいてしまうのです。

よって年下の上司がまずやるべきは「年上の部下に年齢を感じさせない冷静なやりとりをする」ことになります。

そのためにはまず年下の上司のほうが「俺のほうがえらいんだ」と言う感情をできるかぎり無くすことが必要であり、「上司と部下の関係はただ役割だけの職位のちがい」だと良い意味でわりきり、上司としての責務をはたすことに専念することが重要です。

上司だからと言って必要以上に「命令口調」になったり、逆に気を使いすぎて遠慮がちになったりすることは、年上の部下の反発をかったり必要以上の距離をつくってしまうことにつながってしまいます。

よって良い意味で割り切り、上司としての職務に専念することを心がけましょう。

 

2、居場所をつくり、自己重要感を高める

 

年上の部下と良好な関係をきずき活かしきる2つめのポイントは「居場所つくり、自己重要感を高める」です。

年下の上司は年上の部下にたいしては、ほかの部下以上に「居場所」について配慮する必要があります。

なぜなら年上の部下はすでに「自分より年下の社員が上司になっている」ことを見せつけられ、会社での「存在価値」や「居場所」がなくなることを必要以上におそれているからです。

誰でもたとえば今までのポジションをはずされたり自分の意見や考えを否定されれば、その周囲にたいして「疑心暗鬼」になり不安をいだくものですが、それが上記で話した「年齢」と言う頭でわかってはいても心まではなかなか消化できないものに関係するとなるとその思いはさらに大きくなるものです。

よって、年下の上司がやるべきことは、年上の部下の「居場所=承認」を確保することになります。

つまり「ここにいてもいいんですよ」「あなたが必要なんですよ」と自己重要感をあたえることが重要です。

そのために年下の上司が社内で心がけることは主に2つあります。

⓵年上の部下を承認する行動をする

これは日常的に「あいさつをする」「感謝する」「名前でよぶ」「敬語をつかう」と言ったごく普通にやるべきことを省略せずにしっかりとおこなうことが非常に効果的です。

それによって年上の部下が「自分は承認されている」と認識をし、年下の上司にたいして少しずつではありますが心をひらき信頼関係をきずいて行くようになります。

年下の上司が年上の部下にたいして、指示をだしマネジメントする前段階の重要な点と言えます。

②年上の部下の経験を尊重する

年上の部下は年下の上司よりも社会経験や会社での勤務年数も長いと言うメリットを持っているため、年下の上司はその経験やスキルを活かさないことはある意味「損をしている」と言えるのです。

自分だけではなかなか仕事がうまく行かない時はもちろん、それ以外の日常でも「相談する」ことを意識してみましょう。

お互いに同じ目標に向かってスキルや経験を共有することで年上部下は「自分の経験やスキルが社内で活かされている」と言う思いをいだいてくれます。

年下の上司は年上の部下にたいして「必要な戦力」であることをしっかりと明示し、自己重要感を高められる環境をつくりましょう。

その際に気を付けるべき点が1点あります。 

それは「信頼関係ができていない段階ではほかの部下の前で発言等を求めるのはひかえる」と言うことです。

今まで述べてきた年上部下との信頼関係が十分にできていない状態でたとえばミーティング等のほかのメンバーがいる場で相談や発言をもとめてしまうと、最悪な場合相手に「この場で自分の立場を優位にしよう」と言う思いがめばえてしまう可能性があります。

よって年上部下との信頼関係がまだできていない段階では一対一での相談にとどめておくことが重要です。

時間をかけてお互いの思いや考えが共有でき信頼関係が構築できたら、年上上司の「居場所」をつくる意味でもほかのメンバーがいる場での発言等を積極的につくりましょう。

 

3、得意な分野を見きわめ、専門家としてまかせる

 

年上の部下と良好な関係をきずき活かしきる3つめのポイントは「得意な分野を見きわめ、専門家としてまかせる」です。

チーム内で年上の部下を活かすためには「得意分野を見きわめ、専門家としてまかせる」ことが重要です。

つまり「広くあさく」ではなく「深くせまく」仕事をまかせる必要があるのです。

なぜなら年上の部下は、長年の社会経験で「ある特定の分野の経験や能力が非常に高い」「年齢や経験してきた立場上、これから新しい仕事を習得するのはかなりきびしい」と言った理由があげられます。

これは必ずしもそうであると言うことではありません。

シニアの社員でも「自分の可能性をひろげる」「新しいことに不安をもたずに前むき」と言った人もいるので、そう言う年上の部下にはどんどん新しい仕事をしてもらうことが部下自身のモチベーションアップにもつながりますが、やはり年齢をかさねれば「保守的」になるのが通常だと言えます。

そのことからも年上の部下には「新しいことにチャレンジしてもらう」よりも「今までの経験を存分に活かした仕事をしてもらう」ほうがチームにとっても本人にとっても非常に有効と言えるのです。

よって年下の上司は日々年上の上司と接していく中で、本人の「得意分野」を見きわめて行く必要があります。

たとえば

⓵現実的→道具・機械をつかう 職人的仕事

②研究的→調査、研究 考える仕事

③芸術的→感性をつかう、デザイン クリエイティブな仕事

④社会的→人と接する、支援する 教える仕事

⑤慣習的→規則的 マニュアルがしっかりしている仕事

と言った5つの分野のなかで年上の部下が1番今までの経験やスキルを発揮できる仕事や環境をつくると良いでしょう。

これをすることによって、今まで述べてきた「居場所」「存在価値」と言った年上の部下が年下の上司のもとではたらくうえで重要となる要素が充足されるだけでなく、チームの他のメンバーにも良い影響をあたえる好循環が生まれることになるのです。


4、年上の旧武田家臣たちに育てられ活かしきった井伊直政の主従関係

 

今回のテーマで参考になる戦国武将と言えば、敵から「井伊の赤鬼」とおそれられ、天下人・徳川家康をささえた「徳川四天王」の1人に数えられている井伊直政(いいなおまさ)です。

彼は1561年に遠江国(現在の静岡県西部)に生まれ、2017年の大河ドラマの主人公になった「井伊直虎(いいなおとら)」の養子として育てられましたが、その後、縁あって隣国の徳川家康の家臣になります。

そんな直政は徳川家の外様(現代で言う中途入社)であったため、井伊の名前を高めようと必死に戦場で戦いつづけていました。

1582年に家康の同盟相手である織田信長が甲斐国(現在の山梨県)の武田家をほろぼしますが、家康は「優秀な武田家臣を殺すのは損失である」として信長の目をぬすんで彼らを徳川の家臣にむかえました。

間もなくして「本能寺の変」で信長がこの世を去ったことを受けて、公に武田家臣を配下に組み入れたのですが、家康はその武田家臣たちをまだ若輩者の直政につけたのです。

この時、直政わずか23歳の若さでした。

まさに今回のテーマである年下の上司の直政と年上の部下の経験豊富な武田家臣と言う主従関係ができあがったのです。

血気さかんな若者である直政のことです、さぞ強引に武田家臣たちをおさえつけたかと言うとそれがそうでもないのです。

この奇妙な主従関係はじつに良い形に実をむすんでいくことになります。

まず武田家臣たちはスキルも経験もあるため直政にたてついてもおかしくないのですが、彼にたいして1つ1つていねいに戦術や「一軍の将」としての立ち居ふるまい等を教えさとして行きました。

対する直政もそう行った武田家臣たちの経験やスキルを素直な気持ちで受け止め、自分のものにするように努力して行ったと言われています。

また、負けた敵国の元家臣と言うことで負い目を感じていた武田家臣たちを大きな心でむかえいれ、彼らに「居場所」と「存在価値」をあたえたのです。

こうした双方が立場を理解し歩みよる姿勢を見せたことで、この「凸凹コンビ」は徳川家随一の家臣団として成長して行ったのです。

そしてその直政と武田家臣の絶妙な主従関係が家康の天下取りに大きく貢献したことは言うまでもありません。

まさに年下の上司の直政、年上の部下の武田家臣双方が、お互いに成長するために何が必要かを見きわめ忠実に実行したことが会社(徳川家)の発展につながったのです。

 

今回は「年上の部下と良好な関係をきずき活かしきる3つの接し方」についてご紹介させていただきました。

私たちは頭では分かってはいるもののどうしても感情に流されてしまうため、おたがいに「自分のほうが年上なのにしたがいたくない」「自分のほうが役職が上なのでしたがわせたい」と言う気持ちになりがちですが、その時はじめに冷静になり正しい行動を取るべきは年齢が下であれど上司と言うことになります。

年下の上司が「年齢と言うのは単純に生まれた時間の差」と認識し、上下関係はただの役割だとわりきること、そして「年上の部下」の「自分はここにいていいんだ」と言う「存在承認」と「自分は必要とされている」と言う「自己重要感」を満たすことが重要になるのです。

ぜひ、事例でご紹介した直政のように年上の部下が気持ちよく組織の一員としてはたらくことができる場をつくり、共通した目標にむかって共に進んでいける人間関係をきずいてまいりましょう。