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秀吉の家臣に優秀な人材が多かった理由とは?
先日、時間が少しできた時に久しぶりに物置の奥にうまっている昔読んだ本を整理しました。学生時代から「日本史」が好きで、たくさんの「戦国時代」にからんだ本が出てきたので時間を忘れ読み返してみたのですが、その1冊にこんな言葉が書いてありました。「秀吉の家臣に優秀な人材が多かったのは、家臣に答えではなく考え方を教えていたから」と言うものです。
その言葉を読んで私は当時の部下の育成に悩んでいた自分を思い出していました。当時の私はまさにこの「間違い」をおかしてしまっていて、「何をやっても部下が自分で動いてくれない」「自分の指示を受けないと動かない指示待ち人間になってしまっている」と不満を持っていたのです。
この問題はもしかしたらあなたの会社でも起こっている問題ではないでしょうか?こう言った場合、往々にして経営者や管理職がやってしまうのが以下の2つのどちらかです。
1、細かく指示を出す
2、全く指示を出さずに社員に考えさせる
この2つの方法はいずれも間違いです。重要なのは「過干渉」でも「放任」でもない中間の地点になります。
人が自分で行動するまでにはいくつかのステップがあります。
1、疑問を持つ
2、考える
3、決断する
4、行動する
の4つです。
上記に照らし合わせて先ほどのやり方を考えてみます。
1は正確に言うと「指示」と言う名目で「答え」を教えてしまっていないかと言う点に注目する必要があります。先ほどのステップで言うと3の「決断する」ための答えをそのまま与えてしまっている状態です。その結果、社員は1の「疑問を持つ」2の「考える」をしなくなってしまうのです。
まさに当時の私がはまっていたのがこの部分です。私は「早く成長してほしい」と思うあまり、社員にそのまま「答え」を教えて1と2の機械を奪ってしまっていたのです。その結果が「指示待ち人間」を生み出していたのです。
ここから分かるように社員に必要なものは「答え」を教えるのではなく、「考え方」を伝えること。その仕事の「内容」や「やり方」だけではなく、「その仕事をなぜやるのか」と言う「意味」を教えることです。これを伝えることで社員は「どうやって仕事を進めて行けばいいのか?」の疑問を持ち始めステップを踏んでいきます。
次に2はどうでしょうか?この時に注意しなければいけないのは「放置することで社員が疑問をもつことさえできない」状況になっていないかと言うことです。こちらについても社員に必要なものは「考え方」を持つためのヒントを出すと言うことです。人はそもそも「考える土壌」ができていなければ「考える」ことができません。
以上のことから1の「干渉」でもなく2の「放置」でもない適度な「考え方」「意味」を示すことが社員が自立して行動するために重要なことと言えますが、これを実践したのが冒頭に出てきた秀吉と言うことになります。
「考え方」「意味」を示すことで家臣の成長を加速させた秀吉の人材育成術
この点は秀吉の天下取りに向けての家臣である石田三成とのやり取りに非常に良く表れています。秀吉は三成に「答え」を教えることはせずに「考え方」を示し、三成はそれを受けて自分の頭で考え、疑問を持ち決断をして行動をすることで自立した優秀な人材へと成長していきました。
それを端的に表したエピソードがあります。ある日、大雨で川の堤防が決壊する寸前になりその対応に三成があたることになりました。その時秀吉は「なぜ堤防の決壊を止める必要があるのか」等の「考え方」「意味」を示してはいますが、やり方の「答え」は示しませんでした。「自分で考えろ」と言う訳です。
それを受けて三成は4つのステップを踏んで行きます。三成ははじめ百姓に「土のう(袋に土砂をつめたもの)」を積む方法を考えましたが、それでは時間的に間に合わないことが発覚。それを受けて三成は更に考え、なんと豊臣家の米蔵から米俵を大量に持ち出し堤防として積み上げたのです。
それにより何とか堤防の決壊を防ぐことができました。後日、百姓に土のうを作らせその米俵と交換しました。これには百姓も大喜びだったと言います。その報告を受けて秀吉は三成をほめたたえたのです。まさに秀吉が「考え方」「意味」を示し、それを受けて三成が自分で考えて導きだし行動した結果でした。
社員には「答え」を示すのではなく「考え方」を示し、社員が今の仕事に「疑問を持ち」「考えて」「決断して」「行動する」。社員の自立を促進し、成長を加速させましょう。