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社長と管理職が持つべき「覚悟」と「実践」の両輪
今日は初めに私が管理職時代に良くやってしまっていた失敗例をご紹介したいと思います。それは「覚悟」は常に持っていたが「実践」が伴っていなかったと言う経験です。その時に部下に必ず言われていた言葉があります。それは「頭では分かってもできません」と言うものです。
社長は会社の理念を創造し「戦略」を作る、そして管理職はその理念にもとづいて「戦術」を作り実行する。かねてよりお話させて頂いていることですが、この2つを実行する上で持っていなければいけないものが「なにがあっても達成すると言う覚悟」です。
言わずもがなですが社長や管理職が「覚悟」を持ってのぞまない限りその下の社員や部下が「本気」になるはずがありません。社員や部下はそれを社長や上司の日々の動きや態度で見ています。社長や管理職は「達成する覚悟」を心の奥底に焼きつけるほど真剣にのぞまないとすぐに社員や部下に見すかされてしまいます。
ではどうすれば良いのか?それが冒頭でご紹介した自身の失敗談につながります。その時部下は冒頭の言葉に続けてこう発言しました。「社長や上司がやっていないのになんで自分たちだけやらないといけないのですか?やるわけないじゃないですか」と。
この言葉を私は幾度となく部下から言われました。その度に再度自身の日々の行動・態度をチェックすることになるほどの厳しい言葉です。確かに私はマネージャーとして「戦術」をたて、それに伴う「行動の基準とそれをやることの意味」等をその都度部下に説明をし、同意を得てからスタートさせていました。それでも部下が感じているのは「不信」なのです。
これは「人間の頭(で考えること)と心(で感じること)はちがう」と言うことにつながります。また、「人間は何を言われたかではなく、誰から言われたかが重要」と言うことにもつながるのです。部下は「頭では上司が言っていることは重要だしやるべき」「確かに言われていることは正しい」と分かっていても「心でやりたくないと信号を出している」と言う状態だったのです。
その原因は何か?それが「上司(私)から言われたから」やりたくないとなるのです。ではそれはなぜなのか?その原因は端的に言えば「上司のあなたがやっていないのに自分だけなぜやらなきゃいけないのか?」と言う不満です。
ここまで書くともうお分かりかと思います。社長や管理職が持つべき「覚悟」には「実践」と言うもう一方の車輪がともなわなければ決して先には進まないのです。「覚悟」と「実践」の両輪があって初めて先に進むことになるのです。
「実践」と言うのは「自分は社長や管理職だからやらなくても良いだろう」と言う「特別感」を決して出さないと言うことです。簡単なところで言えば「朝の出社時にはみんなであいさつをしよう」と決めたとしたら何はともあれ社長や部下が率先しておこない、何があってもやり続けると言う「覚悟」と「実践」が必要になります。
上洛した京の都で人心を得るために信長が徹底して実行したこととは?
天下統一を目前にして「本能寺の変」で倒れた織田信長は「天下布武」を織田株式会社の理念にかかげ、「戦のない世の中をつくる」ことをめざしました。そして「方面軍制度」と言う「戦略」をたて、各方面軍の司令官が「戦術」をたて実行していきました。
信長は「戦術」は基本的には司令官たる家臣にまかせ報告を受けるのみと言う形を取っていましたが、そんな中でもいくつかの行動指針を決めておりそれを徹底させています。
その1つが「領内での乱暴・狼藉一切の禁止」です。「乱暴・狼藉」とは一般的には犯罪の全般、戦国時代では「財産の略奪や殺人、女性への暴力」等を指します。戦国時代は「力が全ての社会」のためこの「乱暴・狼藉」は戦勝国として当たり前のように行われていたものですが、これを信長は一切禁止としたのです。
例えば1568年に信長が上洛して京に入った時、京の人々は恐れおののいていたと言います。「又新しい征服者が来て乱暴・狼藉が行われるのでないか」と思ったのです。しかし信長は京に入京後直ちに家臣たちに「乱暴・狼藉の一切の禁止」のお触れを出し、自身もそれを完璧に守り切ったのです。それにより信長は京の人々から絶大な信頼を得ることに成功しました。
信長は「天下布武を達成するためには民からの信頼が必要」と分かっていたのです。まさにこれは「天下布武」と言う理念を絶対に達成すると言う「覚悟」と絶対不可欠である民からの信頼を得るために自身の徹底した「実践」を両輪でまわしたと言うことになります。そのことが信長の領内で徹底されたことにより「天下布武」の達成に向けて情勢は大きく変わっていったことはその後の歴史を見ても明らかです。
社長や管理職は「覚悟」と同時に「実践」の両輪をまわしていく。それを見て社員や部下が「覚悟」を決め「実践」に続いていく。そして「戦略」「理念」が達成に近づいていく。ぜひ「覚悟」と「実践」の両輪をまわし前に進み続ける社内の経営サイクルを確立させましょう。