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育成をする上で知っておくべき「怒る」と「叱る」の違い
今回も自身の管理職時代の失敗談から共有したいと思います。あなたは「怒る」と「叱る」の違いをご存知でしょうか?「怒るも叱るも言葉の違いだけで同じでしょ」と思われている経営者様や管理職の方が私の周りにもいらっしゃいますが実は明確に違います。
当時の私も「言葉の違いだけで同じだろ」と軽い感じにしか思っていませんでした。しかし、そんな私は部下からのあるひと言で強烈な気づきを得ることになります。
その日もある1人の部下が、私が頼んだ仕事のケアレスミスをしてしまいました。彼は第二新卒の20代前半の若者でしたが、頼んだ書類の作成に対して「時間通りにつくれない」「誤字脱字が多い」とミスが多くその度に私は「この部下を一生懸命怒って一人前にしなければ」との使命感からか非常に厳しく怒っていたのです。
私は厳しく突き放し、接することで彼が成長してくれると信じていました。言葉も「次は気をつけよう」「何度言ったら分かるの」とかなり厳しめの言葉をかけていました。しかし彼はそんな私の期待を真逆の方向に突き進み、いつまでたっても改善のきざしがないばかりか、どんどんミスが増えていってしまったのです。
そんなある日、私が同じように怒っていると、とうとう部下の怒りが頂点に達しキレ始めたのです。「言っていることは分かるのですが、どうすれば良いのか全然分からないんですよ!」と。
正直その言葉を聞いた私自身も「えっ、なんで?」と彼が何を言っているのか理解できませんでした。私はなかば混乱した状態で「次からはほんとに気をつけてくれ」といったんおさめ、部長に相談しに行きました。自身での解決方法がまったく浮かばなかったのです。
その時部長が私に言って来たのが冒頭の言葉です。「お前は怒ると叱るの違いは知っているか?」とのこと。
部長の言う「怒る」と「叱る」の違いは
「怒る」-ただ感情を発散させているだけで、間違いを改善する行動につながらない
「叱る」-相手の立場にたって原因を分析し、改善策を共に考え提示する
と言うことでした。
そして私は部長に言われたのでした。「お前は部下のことを思って言っているのか?」「間違いを改善できるヒントを提示しているのか?」と。
それを聞いて私ははじめて気づきました。「自分は今までただ感情にまかせて部下に怒っていただけだ」と。確かに今までただの1度も「改善提案」をしていなかったのです。そんな私に部下の「どこを改善したら良いのか分からない」「どうやって改善したら良いか分からない」と言う思いなどまったく知る由もなかったのです。
その時から私の部下への接し方は変わりました。「怒る」から「叱る」に変わることができたのです。その部下とはこちらからヒントを出しながら一緒に問題点を考え、それによってどう言った影響が出ているかを想像し、どうすれば改善できるかを考え、次回以降の改善行動をつくるところまで持って行けるようにしました。それによって部下の仕事も少しずつ良い方向に改善されて行きました。部下の成長を心から実感することができたのです。
「徳川四天王」をはじめとした家康の強力な家臣団たち
この「叱る」を徹底させて部下を育成していた戦国武将がいます。それがあの徳川家康です。
家康は感情的に家臣を怒鳴りつけることはほぼなく、評定(現代の会議や打ち合わせ)の時もほとんど家臣の議論に口をはさむことなく、たまにボソッとヒントを口にし、又議論を進めさせると言う方法をとっていました。
家康の家臣団はその出身地から「三河武士」と呼ばれますが、三河武士の特徴として良く言われるのが「自主性」です。とにかく我が強く、自分の考えをしっかり持っていて、それでいて主君である家康に対しての忠誠心も強い、だからこその自分の身をかえりみずに家康に苦言をバンバン言うのです。
これはひとえに家康が家臣を「怒る」ことで上から押さえつけることを決してせずに、「叱る」ことで家臣1人1人の自主性を伸ばした結果だと言うことができるでしょう。この「改善提案のヒントを与える叱るマネジメント」で家臣の能力を伸ばし、家康は最終的な天下人になるべく家臣団(組織)を成長させて行きました。
「怒る」ではなく改善提案を共に考え次の行動・結果につなげる「叱る」マネジメント。ぜひ自身の感情のままに怒りたくなる気持ちをじっとおさえ、冷静に社員や部下の次の成長につながる「叱る」マネジメントを徹底させ、社員や部下が自身で考え改善できる強い組織をつくりましょう。