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社員に「自信をつけさせる」ことの重要性

 

 「社員のモチベーションを維持するためには何が必要か?」

 この問いにはいくつもの答えがあると思います。「やりがい」と答える人もいるでしょうし「報酬」と答える人もいるでしょう。そんな中で1つあげられるのが「自信を持つ」と言うことがあります。

 今回も私の経験談からお話させていだだきます。私は30代の前半に当時いた会社ではじめて新卒の社員を部下に持ちました。それも2人同時にでした。

 私はかねてよりお話ししているとおり中小企業20年の勤務ですので、基本的な会社の方針はあらかじめ採用目的を持っての中途入社・即戦力採用であり、新卒の社員を採用する会社にはいなかったのが現状です。

 しかしその当時は人員が圧倒的に不足していたこと、又会社の方針として試験的に1から社員を育成してみようと言うトップの思いがあったことから新入社員を採用すると言う流れに至ったのでした。

 当時私には2名の部下がいましたが、この2名はいずれも中途採用の部下たち。私のマネジメント手法は「前社までに経験したことを活かしながら今の会社(チーム)の目標にリンクさせ更に成長・機能してもらう」ことでした。

 しかし新入社員となるとその手法はまったく違うものとなって来ます。1から仕事をしっかりと教える、武道などでつかわれる「守破離」を応用するならば「守(仕事のやり方)」を時間をかけてきっちりと教えると言うことになります。

 更に私が考えてしまったのは2名だと言う点です。先の中途採用の2名は「破(守をふまえた上で更に自分なりの手法に発展させる)」を中心に「離(自分で応用させた手法を更に発展させる)」に向けて進める中で、2名の性格を考慮して「互いに競わせる」マネジメントを実践していました。2名に少しずつ向上心が出て来て、それを更に加速するにはその手法が適していると感じたからです。

 しかし今回は新入社員です。何度か2名と話し合いをした上で、この手法はリスクが高いと判断し「私を含めた3名で協力し合う」と言う手法を選択しました。この年代には「一緒にがんばろう」と言う環境のほうが良いと判断したのです。

 それは一定の効果を出しました。しかし冒頭に書いた「自信をつけてもらう」までにはなかなか至らなかったのです。「この手法では自信はつかないのかな?」と思った時でした。

 その時点から色々と考えた結果「小さな成功体験=自信」を持ってもらう手法に少しずつシフトチェンジしていきました。「協力」を基本にしながらも本当に業務を細かくかみくだき、2名で協力すれば結果につながるような仕事を段階的に落として行きました。

 ここまで細心の注意をはらったことで2名の部下は少しずつですが成功体験を積み重ね、自分の仕事に対する「自信」をつけることで成長していってくれました。この経験からも「自信を持つ」と言うことが重要と分かります。

 

武田信玄が「風林火山」旗を使って実践した驚きの「社員の自信アップ」法

 

 実に驚きのマネジメント手法で「社員に自信をうえつけた」武将がいます。それが武田信玄(たけだしんげん)です。

 信玄は「甲斐(現在の山梨県)の虎」と言われ、その主力部隊だった「武田騎馬軍団」は戦国時代最強としてあの同時代を生きた織田信長でさえおそれ貢ぎ物を送りつづけて機嫌をうかがっていたと言われる戦国武将です。

 そんな信玄が戦の際に用いたとして有名なのが「風林火山」の旗。紀元前の中国の兵法家の「孫子(そんし)」の兵法から引用した(内容については割愛させていただきます)ものですが、当時「風林火山の旗が戦場になびいていると戦いに勝利した」と兵士の間でもうわさになっていたと言います。

 実はその裏には信玄の巧妙なマネジメント手法がかくされているのです。

 信玄は「風林火山」旗を作成した当初、家臣たちにこう指示を出しました。「私が次の指示を出すまでは何があっても必ず勝ち戦になる状況にのみ旗を立てるようにせよ」と。家臣は言われるままに圧勝の時にのみ戦場に「風林火山」旗を立てました。

 時が経ち、信玄から次の指示が飛びます。信玄いわく「機は熟した。では次は逆に戦況がかんばしくなく負け戦になりそうな状況にのみ旗を立てよ」との指示が。

 家臣は言われるがままに負け戦の状況の際に「風林火山」旗を立てはじめました。するとどう言った現象が起こったのか?負け戦だと思われた戦況が「風林火山」旗が立つと武田軍が押し返し逆転勝利することが続出したのです。

 この裏にはどんな真実がかくされているのでしょうか?それは信玄の指示の出し方にあります。

 はじめは「勝ち戦」に使う、これはすなわち戦っている家臣たちが勝利した時にこの旗がなびいているのを見て「風林火山の旗がなびいていると勝てる」と本能的にインプットさせることを目的にしたのです。これはまさに「小さな成功体験=自信」をつけさせることに他なりません。

 次に信玄は「逆」の指示を出します。これはもうお分かりかと思いますが、どんなに戦況が厳しい状態にあろうとも「風林火山」旗がなびいているのを見た家臣は一気にモチベーションがアップするのです。「旗がなびいているから自分たちは勝てる!」と言う自信が戦況を逆転させる大きなエネルギーになったのです。

 これはいわゆる生物学的に言う「すりこみ(インプリンティング)」と呼ばれるものです。

 厳しい戦況をくつがえし逆転勝利にみちびいたのは、まさに「旗がなびいているから勝てる!」と言う「すりこみ=成功体験=自信」のなせるわざだったのです。

 余談ですが、逆に言うと武田の周辺国からはこう恐れられていたと言います。「風林火山の旗がなびいている時の武田は異常なほど強い」と言う「すりこみ」です。まさに人の心理を完全に読み切った信玄のマネジメント戦略と言えるでしょう。

 こうして「武田軍団は戦国最強(これもすりこみと言えるかも知れません)」と言われるほどになったのです。

 社員は自信を持つと一気に成長を加速させていきます。そしてその「自信」をつけさせることができる存在がトップであり上司なのです。ぜひ社員1人1人に合った小さいことからの成功体験の積み重ねを実践し、会社が発展する基盤をつくってまいりましょう。