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職場での人間関係を円滑にする3つのコミュニケーション能力

 

 人が生きていくうえで欠かせない能力の1つが「コミュニケーション能力」です。

 人は他人と関わりを持たずに生きていくことはできませんし、ましてや共にすごす時間が多い職場では非常に大切なスキルとなります。

 しかしその一方で「職場での人間関係のコミュニケーション」について悩んでいる人は多く、職場での悩みの9割が「人間関係のコミュニケーション」だと言う調査結果もあります。

 私も20年のサラリーマン生活のなかで、部下や同僚から実にさまざまな「職場での人間関係のコミュニケーション」にたいするグチを聞いてきました。

 代表的なものは主に以下のようなものです。

 

「職場の人間関係で不安や問題をかかえている」

「なぜ部下は私の言うことを聞いてくれないのか?」

「言いたいことが相手につたわらなくていらいらする」

「どうして私のことを分かってくれないのか?」

 ここで共通することはどれもが「自分目線」での悩みと言うことです。

 人間関係を円滑にするコミュニケーションに悩んでいる人の特徴として、相手がいるにもかかわらず自分のみの一人称で思考がとまっていることがあげられます。私たちは誰もが1人でコミュニケーションをとることはできません。

 よって「職場での人間関係を円滑にするコミュニケーション」で心がける点は相手がいることを前提にするとそのやるべきことがおのずと見えてきます。

 今回はその点をふまえて職場での人間関係を円滑にする3つのコミュニケーション能力をご紹介します。

 

1、信頼関係を築く能力

 

 職場での人間関係を円滑にするコミュニケーション能力、1つめは「信頼関係を築く能力」です。

 人間関係を円滑にするためには「相手の存在価値を認める」ことが前提となります。そして「相手の存在価値を認める」ことは相手から見ると「自分は価値ある存在である」と思えると言うことでもあるのです。

 なぜなら人は「感情」でうごく生き物でありどんなに論理的に正しいことを言われても、感情が同意していなければ真に受け入れることができないからです。これは「自己重要感」と言う言葉で言いあらわすことができます。

 人はこの「自己重要感」を求めているのです。

 たとえばこのような経験はないでしょうか?

 あなたは上司に怒られています。自分にも言いたいことがある、しかしその話をまったく聞いてくれることもなく上司は一方的に自分の失敗の行動を指摘し本来やるべきだったことを話してくる。

 たしかに上司の言っていることは正しい、ですがどうしても感情的に受け入れることができない。

 人はこのような状況が続くとその相手にたいして心をとざしてしまい、本音を語ることをしなくなり無意識レベルで相手をさけるようになります。その結果、前提である「自己重要感」を感じることができず、いくらコミュニケーションを取っても形だけの心のはいっていない状態になってしまうのです。

 人がコミュニケーションをとることは「目的を達成するため」です。それが職場であればなおさらのこと、会社全体やチームの目的を達成するために部下や同僚、上司と信頼関係を築いた状態でコミュニケーションをとる必要があるのです。

 ではどうすれば相手の「自己重要感」をみたし信頼関係を築くことができるのでしょうか?

 

⓵何があっても「絶対に否定しない」と決める

 人は「安心できない状態」である「否定されること」をおそれます。第一声から「それはちがう」「それはむずかしい」、更には相手の存在自体も否定するような発言をしてはいないでしょうか?

 何があっても「絶対に否定しない」と決めましょう。

 ただし「絶対に否定をしない」と言うのは「相手の意見をすべて受け入れる」と言う意味ではありません。自分の意見は持ちながらも「相手はこう言う意見や考えを持っているのだ」と受けとめるだけでよいのです。

 「受けいれる」のではなく「受けとめる」を心がけることが重要です。

 

②相手の行動における「背景と理由」を理解する

 人の発言や態度はかならず何かしらの「理由」があり、それが元となって生じるものです。

 「なぜ相手がその行動や発言をしたのか、理由を聞く」ことを心がけましょう。

 たとえ、一般常識としては「まちがい」とされていることであっても、あなた自身が「ありえない」と思うことであっても、否定されて当然と思われることであっても、まずは「相手がなぜそういうことをしたのか」と言う「背景」と「理由」を理解しようとする姿勢を見せることで、相手はあなたに「安心感」をおぼえ、相手の態度は大きく変わります。

 その行動をしている本人はそれが「良い」ことだと思ってやっていることも多いものです。まずはその行為がなぜまちがっているのかをコミュニケーションをとるなかで気づいてもらうことが重要なのです。

 

⓷どんなに親しい間柄でも相手のことを「名前」で呼ぶ

 名前は誰もがもつ社会生活上での存在価値です。決して略さずに呼ぶようにしましょう。

 あなたは相手を「おい」「君」や役職である「部長」「課長」等で呼んでいないでしょうか?

 さらには相手の名前をついまちがえて呼んでしまった経験はないでしょうか?

 その行為は相手に「自分(の名前)にはおぼえてもらうだけの価値がないのか」と言う思いをいだかせることになります。

 人は自分の名前が呼ばれることで、自分が「その他大勢」ではなく、個人として認識してもらえていると実感します。そのため、コミュニケーションをとる中で相手の名前を省略してはいけません。相手の名前を呼べば呼ぶほど、相手は「自分は重要な存在なんだ」と認識してくれるのです。

 職場で「役職」で呼ぶ時については、「部長」だけではなく相手の名前をはじめにつけて「~部長」と呼ぶように心がけましょう。

 

2、聴く能力

 

 職場での人間関係を円滑にするコミュニケーション能力、2つめは「聴く能力」です。

 人は誰もが自分の考えや思いを話してしまいがちですが、円滑なコミュニケーションをめざすためには自分以上に「相手の話を聴く」ことが重要です。

 なぜなら人は「自分の考えていることをすべて吐きださないと、新しい考えを納得して受けいれることができない」からです。人はあなたがそうであるように、相手の話を聞きたいと言う欲求よりも「自分の話を聞いてほしい」「自分が話したい」と言う欲求のほうが大きいのです。

 「自分の話を聞いてほしい」と言う欲求が不完全燃焼の時にいくら話やアドバイスをされても、たとえその話が正論だったとしても決して相手の耳には入っていきません。

 これは良く「コップに入っている水」に例えられます。

 人は自分の考え等で常にコップの中の水が満杯になっています。その状態でコップにあなたの話やアドバイスと言う「水」をいくら入れようとしてもあふれてしまうばかりなのです。

 新しい水を入れたいのであれば、コップの中の水を減らさなければならないのです。そしてこの「コップの水を減らす」方法が「話を聴く」と言うことです。

 具体的な方法は「聴く姿勢」では「正面を向く」「相手の目を見る」「うなずく」「相づちをうつ」と言った動きをすることで相手がより自分の話をしやすい雰囲気をつくることが重要です。

 また「聴く内容」としては「話を掘りさげる」「チェーン状にひろげる」と言ったものがあります。

 「話を掘りさげる」とは「今の~の件でもう少しくわしく教えてください」と返すことで相手にさらにくわしい内容を話してもらう、「チェーン状に広げる」とは1つの言葉から更に話の内容を広げると言うことになります。たとえば「昨日、新宿に行った」と言う話であれば「どんな用事で行かれたのですか?」や「誰と行かれたのですか」などと返すことで話の内容が広がり、よりくわしく深い情報をえることができるのです。

 これまでの「信頼関係」「コップの余剰」ができた段階ではじめて人は相手の話を正しく受けとめる状態ができたと言えます。

 

3、伝える能力

 

 職場での人間関係を円滑にするコミュニケーション能力、3つめは「伝える能力」です。

 人とのコミュニケーションの最大の目的は「自分の思い」を相手に伝えることです。特に仕事で部下や同僚に指示をする場合には「正しく真意が伝わっているか」が非常に重要です。

 なぜなら「どこまでやってほしいのか」「いつまでにやってほしいのか」「どのレベルまでやってほしいのか」と言ったことが正しく伝わっていない場合、思ったとおりの成果物があがってこない可能性が非常に高く作業効率が悪くなるからです。

 わかりやすく人に伝えるためには「伝えたいことは何か」「どの状態までやってほしいのか」と言った結論や目的を明確にして伝えることが重要になりますが、それには結論から話す「PREP法」や「5WH」を使ったコミュニケーションの方法があります。

 

PREP

P POINT=結論をのべる

R REASON=理由を話す(簡潔に長くならないように)

E EXAMPLE=事例、シーンを語る

P POINT=最初の結論でしめる

 

②5WH

When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」

 

 さらに伝える際に気をつけるべき点は「やらせようとしない」「命令しない」と言うことです。

 たとえば、人は相手からアドバイスや指示を受けた時「よし、やろう」と前向きな気持ちになるのはどちらでしょうか?

A 相手が考えた方法で「これをやりなさい」と言われる場合

B 自分が考えた方法を相手から「それでやってみよう」と言われる場合

 

 その答えはBとなります。

 人は自分が考え導きだした方法により前向きに動きだすことができるのです。

 よって前述の「PREP法」「5WH」を心がけながらも、具体的な方法については相手と話をする中で「気づいてもらう」ことが重要です。

 

 

4、存在をみとめ、話しを聴くことで家臣とのコミュニケーションを円滑にし、強い領国を作りあげた毛利元就

 

 円滑なコミュニケーションと言う点で参考になる戦国武将には毛利元就(もうりもとなり)がいます。

 元就が生まれた当時の毛利家は安芸国(現在の広島県)の小さな国人領主の家にすぎず、勢力的にもいつ他国に攻められて滅ぼされてもおかしくない状況でしたが、彼はそこからわずか一代(約30年)で西は現在の山口県から東は岡山県の地域までの中国地方10か国を領有する一大戦国大名になりました。

 現代で言えば地方の一中小企業が大企業に急成長したと言うことですが、そんな元就にとって解決しなければならない課題の1つが人材の問題でした。

 急激に領国が拡大したので有能な人材が不足していたのです。

 その課題に早くから気づいていた元就はあることを心がけていました。

 領国を拡大する際に占領した相手河の有能な人材を殺さずに毛利家で仕官するように働きかけ家臣団にくわえて行ったのです。

 その状況において元就は新しく毛利家の家臣となった元は敵だった相手にどう接したのでしょうか?

 元就は力で相手をねじ伏せるのではなく相手の存在価値をみとめ、誠実にコミュニケーションをとることを心がけたのです。特に元は他国の領主(社長)だった者にたいしては最大限の配慮をしたと言われています。

 これは元就が相手の「自己重要感」を認めたと言うことです。

 更に元就は新しく家臣となった者の話を誠実に聴くことを心がけました。

 彼らが今まで自国を運営してきた思いやノウハウを否定せずに「良いものは自国にも取り入れよう」との思いでコミュニケーションを取ったのです。

 その元就の思いを受けて当初は懐疑的だった新しく家臣となった者たちも少しずつ元就にたいして心をひらき、信頼関係を深めていきました。

 これは元就が違う価値観を持つ相手にたいしてどのようにコミュニケーションを取れば円滑な人間関係を築けるかを悩み、考えた末にたどり着いた境地であり、一代で中国地方を制するほどの大勢力に成長した原動力と言えます。

 毛利家は元就の人間関係を円滑にするコミュニケーションによって大きな発展をとげることになったのです。

 コミュニケーション能力は人が生活していく上で欠かすことのできないものですが、今回ご紹介したとおり、誠実に相手と接し信頼関係を築くことができてはじめて正しいコミュニケーションをとることが可能になります。ぜひ職場での人間関係を円滑にするコミュニケーションを実践し、会社・チームのさらなる発展をめざしてまいりましょう。