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指示を聞かない若手の部下を戦力にする3つのポイント
「自分の指示を聞かない部下(社員)にこまっている!」
「ほんとうにあいつは言うことをきかない生意気なやつだ!」
となやんだりイライラしていませんか?
今回はそんな「指示を聞かない若手の部下(社員)」になやまれている経営者・管理職の方にむけてのお話です。
この点は私自身も部下を持った時にひじょうになやみ、泣かされました(笑)。 「どうして自分の指示を聞かないんだ!?」と部下にたいしてキレてしまったこともあります。
この問題のポイントは上記の「聞かない」と言う自分目線での考えかたにありますが、今回は自身の経験もまじえてお話ししていきます。
部下(社員)が自身の指示を聞かない状態では仕事を円滑に進めることはできません。 よって部下(社員)には自身の指示を理解してもらう必要があります。
「だけどこっちがいくら言っても部下(社員)が言うことを聞かないんだ」
「自分は部下(社員)のことを思って言っているのでこっちは悪くない」
と思っている経営者や管理職の方もおられるでしょう。
しかし悪いのは部下(社員)ばかりではないのです。
なぜなら上司であるあなたの「指示のしかた」や「部下(社員)への理解不足」の可能性があるからです。
つまり
⓵あなたが出した業務の指示を、部下(社員)が正しく理解していない
⓶部下(社員)が前むきに仕事にはげむ指示のしかたをあなたが理解していない
と言う点です。
たとえば私の顧客先でこんなできごとがありました。
先方で本日必要な資料(原本)を実はまだ送っていないことが判明、社長はすぐに社員のAさんに指示を出しました。
「B社に急ぎでこの資料を送って!」
数時間後、顧客先から「まだ届いてないよ!」とお怒りの電話が。
社長は顔を青くさせながら指示をだしたAさんに「急ぎで送るように言ったのにちゃんとやったの!?」と問いただします。
するとAさんは胸をはってこう言ったそうです。
「はい、急ぎとのことだったので郵便局から速達で送りました!」
社長の頭の中には「バイク便」と言う考えがありましたが、それが正確に指示を出さなかったことによってAさんは「速達」で出してしまったのです。
これはまさに⓵の事例に当てはまると言えるでしょう。
社長は「本日中・急ぎ」と言うキーワードから「バイク便」で送ることが当たり前だと考えてしまい正確に指示を出さなかったのです。 その「これは言わなくても大丈夫だろう」と言う認識が大きな差を生んでしまうのです。
今回は上記の事例の改善点をふくめた「指示を聞かない若手の部下(社員)を戦力にする」ための3つのポイントをご紹介します。
1、部下(社員)への指示のしかたをチェックする
指示を聞かない若手の部下(社員)を戦力にする1つめのポイントは「部下(社員)への指示のしかたをチェックする」です。
経営者や管理職は「部下(社員)が指示を聞かない」となげく前に「部下(社員)がどんな人物なのか」を知らなければ的確な指示を出すことはできません。
なぜなら部下(社員)は一人ひとり、仕事にたいする経験やスキルがちがうからです。
たとえば先ほど事例としてあげたAさんなどは「バイク便」と言う手段に到達さえしませんでしたが、これは未経験だったからと言えます。 部下(社員)の経験やスキルが一人ひとりちがう以上、指示をする側も全員同じ指示を出すだけでは受け手側に正確に伝わりません。
例として大人と子供に買い物を依頼するシーンを考えてみます。
「ペットボトルのお茶を買ってきて」とお願いするとした場合、大人であれば依頼した側がのぞんでいるものを買ってきてくれる可能性は高いでしょう。 更に言えば過去に同じ経験をしているかどうかで指示の度合いはかわってきます。
しかし、これが子供となると「売り場はここで」「お茶と言っても緑茶ね」と1から10まで順をおって説明をする必要が生じるのは想像にかたくありません。
つまり「指示」と言うのは受け手側に正しく伝わらなければ意味がないものであり、いかに依頼する側が受け手側に的確に指示ができるかがポイントとなるのです。
先ほどのAさんの事例も社長が「バイク便を使って」と正確に指示を出していれば不測の事態は起きなかったと言えます。
部下(社員)の経験やスキルは日頃のやりとりの中で経営者や管理職が把握するしかありませんが、「部下(社員)の仕事にたいする考え方」は大きく3つに分けることができます。
⓵仕事の意義を考えるタイプ
このタイプの部下(社員)は「なぜその仕事をしなければいけないのか?」を重視します。 そのため「仕事をやるべき理由や目的」や「部下(社員)にとってどんなプラス要素があるのか」を明確にしめす必要があります。
⓶自分ができることにやる気を感じるタイプ
このタイプの部下(社員)は自分ができること、できないことを明確に区別し、できない仕事にたいして消極的になります。 そのため「できるイメージを持たせる」ことが非常に重要です。
子供がはじめて自転車に乗る時のように、途中までしっかり後ろでささえてあげながら「もう手をはなしても大丈夫」と言うタイミングまで正確な説明をしたうえでまかせます。
このタイプの部下(社員)は「できる」と認識するとその仕事に意欲的に取りくむようになるため、その「できる仕事」を増やしてあげることが重要になります。
⓷自分の感情で仕事をするタイプ
このタイプの部下(社員)は自分の感情的な経験や好き嫌いが仕事に結びつきやすいことが特徴です。 「気分がのらない」「その仕事に関係している~がきらい」と気分で「できるのにやらない」と言った行動をおこします。
3つの中では一番やっかいなタイプだと言えますが、時間をかけてその根源の感情を聞きだし可能なかぎり改善に取りくむことが重要です。 ていねいなコミュニケーションを心がけましょう。
2、部下(社員)のやる気の根源を知る
指示を聞かない若手の部下(社員)を戦力にする2つめのポイントは「部下(社員)のやる気の根源を知る」です。
部下(社員)が指示を聞かない原因の一つとして「経営者や管理職と部下(社員)がそれぞれ重視しているやる気の根源がずれている」ことがあげられ、その点が一致していないと部下(社員)は仕事にたいしてモチベーションは上がりません。
なぜなら人は「自分にとって価値がありプラスになるもの」により高いモチベーションで動こうとするからです。
この点は経営者や管理職のあなたにも思いあたるふしがあるでしょう。
人が仕事をすることで得たいと思うものとして昔で言えば「報酬」「役職」「評価」と言ったものがありますが、今回の「若手を戦力化する」ことを考える場合、先にあげたものは実はいずれも若手の部下(社員)には必ずしもひびくものではありません。
なぜなら現代の若い世代はいわゆるバブル後の経済成長がない時代を生きてきたことで「報酬」や「役職」と言ったものは単なる「生活の安心の手段」ととらえているからです。
つまり「報酬」や「役職」は生活に支障がない程度にあれば良いもので、決して彼らの働くモチベーションにはならないのです。
では彼らのモチベーションを大きく上げるものは何なのか?
それは人の根源的な欲求をひもとけば見えてきます。 人は「自分のやりたいこと」のためにモチベーションを上げてみずから動くのです。
よって若手の部下(社員)は
×「報酬」「役職」と言ったものでコントロールするのではなく
〇何に「情熱」を持っているのかを知り、できる限りそのステージを用意する
ことが重要となります。
経営者や管理職は若手の部下(社員)の「志」や「やりたい仕事」について話しあう場を持ちましょう。
具体的な方法としては、たとえば全社やチーム単位で自身の人生をふりかえる「人生たなおろし会議」を開催し、全員が「自身が一番大切にしていること」「これからどう生きたいか」等を客観的に見つめなおす機会をもうけます。
それをふまえ、可能な限り部下(社員)の希望にそった仕事をまかせることで若手の部下(社員)は前むきに仕事に取りくむようになっていきます。
3、期限を伝えたうえで放置する(まかせる)
指示を聞かない若手の部下(社員)を戦力にする3つめのポイントは「期限を伝えたうえで放置する(まかせる)」です。
これはつまり「分かった。君の思うとおりにやってみなさい」とまかせることです。 指示を聞かない若手の部下(社員)には一度好きなようにやらせてみることが非常に有効です。
なぜなら彼らは自身の仕事のやり方に自信を持っているため「好きなようにまかされる(放置)」とがぜんモチベーションが上がるからです。
自身のやり方で進めようと思っていたら、周りから「それよりこうしたほうがいいよ」と横やりを受けてイラっとした経験は誰もが持っているでしょう。
人は「自由にできる範囲」が広ければ広いほど気持ちを前むきにして動きます。 裏をかえせば「支配される」ことをのぞまないのです。
よってこのタイプの若手の部下(社員)は経営者や管理職の指示には聞かない傾向があります。
一度全面的に放置してまかせてしまいましょう。
しかし、ここで経営者や管理職がかならずしておかなければならないことがあります。
それは「期限の共有」と「許容できるリスクの範囲」を明確に線引きしておくことです。
「期限」については若手の部下(社員)と確認し(進捗ごとの中間の期限も決めます)、「許容できるリスク」については経営者や管理職側で明確に決めておきます。
「これ以上は会社に損失を出してしまう」「取引先に迷惑をかけて信用問題になってしまう」と言ったところになるでしょうが、そこまではぜったいに口を出さないことが重要です。
これをすることでその若手の部下(社員)の仕事におけるスキルや習熟度が分かります。
期限やリスクの範囲をクリアすれば次回以降もその仕事についてはまかせて良いでしょう。 しかしクリアできなかった場合がより重要です。
「やっぱりできなかったじゃないか」とつめたく突きはなすのではなく、「どうしてできなかったのか」を若手の部下(社員)に客観的に考えてもらいながら次回はどう進めるのかを話しあいをしながら決めていきます。
この時点で若手の部下(社員)も実際に自身のやり方でやってみての結果のため、それぞれ認識の深さに差はあるものの現実を真摯に受けとめ「次回はどうすればよいか」を考えるようになります。
この一連の流れを繰りかえすことで若手の部下(社員)は「自分を信頼してくれている」と認識し、仕事に前向きになって行きます。
4、絶対的な上官でありながら若手の部下にも誠実に接した山本五十六
今回の「若手の部下(社員)の戦力化」と言うテーマで参考になるのは昭和の太平洋戦争において、帝国海軍の連合艦隊司令長官としての責任をはたした山本五十六(やまもといそろく)です。
私のコラムは先人の事例として戦国武将を紹介するのが通例ですが、今回は最も適した先人が山本五十六と言うことでご紹介させていただきます。
その理由は彼が言ったとされる以下の若手の部下の育成方針にすべてが凝縮されているからです。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
話しあい、耳をかたむけ、承認し、まかせてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見まもって、信頼せねば、人は実らず。」
山本五十六は1884年(明治17年)に新潟県長岡市で誕生しました。
その後帝国海軍に入隊し、1939年(昭和14年)に連合艦隊の司令長官に就任しました。。
連合艦隊司令長官と言えば帝国海軍の花形の役職であり実質的な海軍のトップでしたが、当時の軍隊と言えば上下関係は絶対的なものであり、部下は上官の命令には絶対服従でした。 その海軍のトップにいた彼も絶対的な権力を持っていたのです。
そんな役職にいた山本五十六、当然力で部下をおさえつけることも充分に可能だった(ほかの上官たちはその方法をとっていた人がほとんどでした)中、彼の部下にたいする接し方は実に意外なものだったのです。
彼はどんな役職や年代の部下にたいしても公平に誠実に接することを常にこころがけたのです。 そんな山本五十六が常に考えていた部下の育成方針が上記の格言です。
その背景には若い時代にアメリカに留学していた経験があり、女性を尊重する欧米の文化を自身の目で見てきたからとも言われています。
つまり山本五十六は「人は力で命令では決して前向きに動くことはない」と言うことが分かっていたのです。
そんな山本五十六は軍艦内で下士官である部下からすれちがった際に敬礼をされると、ほとんど同時に相手以上のていねいな敬礼のお返しをしたと言われています。
また小型の手帳を肌身はなさず持っており、そこには戦死した部下たちの名前と住所が記されており、船をおりて陸にあがった際には可能な限り部下の墓参りに行ったと言うエピソードも残されています。
そんな彼を部下たちは心から尊敬し、まさに「命を投げすてる覚悟」で戦場に出て行ったのです。
まさに山本五十六の誠実さが帝国海軍の戦力をささえていたと言えるのです。
今回は「指示を聞かない若手の部下(社員)を戦力にするポイント」についてご紹介をさせていただきました。
若手の社員(部下)が上司である「経営者や管理職の指示を聞かない」と言うことはかならずその根底に「指示を聞かない理由」がかくされています。 よって経営者や管理職は「部下のくせに」とイラつく前にその理由を把握する努力が必要になるのです。
ぜひ今回ご紹介した「指示を聞かない若手の部下を戦力にする3つのポイント」を参考にしていただき、若手の部下(社員)を貴重な戦力にしてまいりましょう。