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ゆとり世代の部下の心に火をつける3つの着火ポイントとは?

 

「最低限の仕事しかせず定時になるとすぐに帰ってしまう」

「恥や失敗をおそれて新しい仕事に挑戦しようとする意欲がない」

 

あなたはいわゆる「ゆとり世代の部下」にたいしてこんな不満やなやみを持ってはいませんか?

「ゆとり世代の部下とどう接すれば良いんだ?」と30代以上の社長や上司は多いでしょう。

ほかにもこまかい点で言えば・・・

「仕事を休む時に電話ではなくLINE等のSNSで一方的に連絡してくる」

「少しきつく注意をしたらすぐにやめてしまった」

「具体的な指示をださないと自分ひとりではまったく動くことができない」

「この仕事やる意味あるんですか?と一言多い」

など私のお客様である社長や上司からも相談を受けたことが数多くあり、「ゆとり世代の部下」にたいするなやみは枚挙にいとまがありません。

私も在職中のマネージャー時代に複数人の「ゆとり世代の部下」を受け持ちましたが、ほんとうに自身の世代との考え方のギャップにおどろかされ、なやみました。

「ゆとり世代の部下」にたいして社長や上司がコミュニケーションをとり、モチベーションを上げるにはいくつか注意すべきポイントがあります。

今回は「ゆとり世代の部下」の心に火をつける3つの着火ポイントについてご紹介させていただきます。

 

1、ゆとり世代の部下の特徴とは?

 

30代以上の社長や上司がいわゆる「ゆとり世代の部下」をマネジメントする際に第一に気をつけなけなければいけないことは「自分たちの世代の考えでゆとり世代の部下に接しては絶対にいけない」と言う点です。

なぜなら私もふくめた30代までの世代といわゆる「ゆとり世代の部下」では学校で受けてきた教育方法がまったく異なり、考えかたに大きな差があるからです。

つまり私たちの世代の考え方で「ゆとり世代の部下」のマネジメントをしようとすればするほど、部下との関係が悪化していくことになります。

冒頭にあげた社長や上司の不満やなやみはすべて「学校での教育でのちがい」を理解していないことが原因でおきていると言えます。

よって社長や上司はまず「ゆとり世代の部下がどんな教育を受け、どんな考えを身につけて社会に出てきたのか?」を知る必要があります。

「ゆとり世代」とは、教育指導要綱の改訂により、2002年~2011年の間に義務教育を受けた世代を指し、目的はいわゆる私たち世代が受けてきた「つめこみ教育」による弊害を排除するために

 

①「無理のない学習環境で子どもたちがみずから学び、考える力を育てる」

②「偏差値重視の教育を廃止し、生きる力を育成する」

 

ことを目的に実施されました。

その成果として有名な人で言えばプロ野球選手の大谷翔平さんやフィギュアスケートの羽生弓弦さんなどを輩出しましたが、逆に無理のない学習プログラムを組み、時間の使い方が子供本人にゆだねられたことで二極化がすすみ、また「人と比べない」「ナンバーワンより、オンリーワン」と言った競争しない方針を採用したため「横ならび」「目立つのがいや」と言った考えを作りあげたと言われています。

さらに、「ゆとり世代」は生まれた時から社会全体がいわゆる「不況」の時代であり、「出世」や「ぜいたくな生活」にあまり執着がなく「ほどほどに暮らして行ければ良い」と考えていることも特徴の1つと言えます。

ワードで言えば「無難」や「平穏」と言った特徴があげられ、「出世」や「成功」と言うワードに心をおどらせた私たち世代との大きなギャップを生んでいるのです。

そのため「ゆとり世代の部下」の心に火をつけ活き活きとはたらいてもらうためには、上記の点をふまえたマネジメントが必要になるのです。

 

2、仲間への思い・きずなを最大限に活かすワンピース戦略

 

ゆとり世代の部下の心に火をつける1つめの着火ポイントは「仲間への思い・きずなを最大限に活かすワンピース戦略」です。

ゆとり世代の部下には「報酬」によって競争意識を生み出すのではなく、チームによる「仲間」意識を作りだすことが重要です。

なぜなら上記のゆとり世代の部下の特徴にもあったように、彼らは「人と比べない」「ナンバーワンよりもオンリーワン」の教育を受けたことで、人と競争することをきらい、自分だけが突出することを非常に苦手としているからです。

あなたは「ワンピース」と言うマンガをご存じでしょうか?

国内での累計発行部数が4億部を突破している大人気のマンガですが、ゆとり世代の若者に非常に多くの愛読者がいると言われています。

このマンガが多くのゆとり世代に支持される理由の1つがまさに「仲間」を大切にしているマンガだからです。

主人公のルフィは「海賊王」になるために行く先々で多くの心から信頼できる「仲間」をつくり、チームとして航海をつづけていきます。

ルフィをふくめ仲間が個性的な特徴を持っており、それぞれが特徴を活かして「みんなのために」と言う思いで助け合いながらチームとして大きな目標に向かって突きすすんで行く姿がゆとり世代の若者の心をとらえているのです。

ゆとり世代の部下は「上下の関係」よりも「横のつながり」にたいする思いが強いのです。

よって社長や上司からの指示と言った形ではなく、信頼のおけるゆとり世代の部下を中心とした「チーム」を作りましょう。

一人ひとりの得意な点をチーム内で発揮できる環境を作ることによって「自分もチームの一員」と言う気持ちが生まれ、「チームのためにがんばろう」と言う前向きな姿勢になります。

過度な干渉はさけ、要所でアドバイスをする関わり方をつづけることで、チームとして自主性が生まれ、ゆとり世代の部下の一人ひとりが活き活きと働く人材になっていきます。

 

3、失敗してもよい環境つくりとプロセスを評価する

 

ゆとり世代の部下の心に火をつける2つめの着火ポイントは「失敗してもよい環境つくりとプロセスを評価する」です。

ゆとり世代の部下には、失敗にたいして必要以上に「責任追及」をしたりせずに広い心で許容することを心がけましょう。

なぜなら上記のゆとり世代の部下の特徴にあったように、彼らは「競争」をしてこなかったことにより「失敗」を経験しておらず、また「失敗」することをおそれているからです。

つまり「失敗」することへの「耐性」がないのです。

その状態できつく注意したことが原因で「やる気をなくし」たり最悪な場合「辞めてしまう」と言ったことが普通に起きています。

あなたも「ゆとり世代の部下をきつく注意したら気持ちを閉ざしてしまった」と言う経験はあるのではないでしょうか?

よって社長や上司がこの点についてまずやるべきことは「ゆとり世代の部下に多くの失敗の経験をつませてあげる」ことであり、また「失敗してもまた次に安心してチャレンジできる環境」をつくることになります。

ゆとり世代の部下に「失敗することは恥ではない。成功するために必要なプロセス」だと言うことを心から感じてもらわないとならないのです。

失敗を許容できる環境がないと、特にゆとり世代の部下は新しい仕事にチャレンジせず成長のチャンスをのがしてしまうだけではなく、失敗したことを恐れるあまり最悪な事態として「失敗をかくす」と言った行動に出ることになります。

「会社への損失の有無」のバランスを考えながら「失敗しても良い」仕事については「失敗しても大丈夫だから」と背中をおしてチャレンジさせて、仮に失敗したとしても責めるのではなく「どうしたら成功するだろうか?」と一緒に考えるようにしましょう。

また、ゆとり世代の部下は「大きな成功体験」を持っておらず自分にたいして自信を持っていないため、仕事の結果だけではなく「1ミリの進歩」のプロセスを数多くほめることを心がけましょう。

ゆとり世代の部下には「安心して失敗でき、のびのびと成長できる」環境をつくることが重要です。

 

4、自分の仕事と社会の価値を融合させるストーリー構築

 

ゆとり世代の部下の心に火をつける3つめの着火ポイントは「自分の仕事と社会の価値を融合させるストーリー構築」です。

ゆとり世代の部下に仕事を依頼する際には、その仕事が「社会の役に立っている」「社会的に価値がある」ものだと言うことをストーリーとして語ることが重要です。

なぜならゆとり世代の部下は上記の特徴にあるように「自分で考えること」を求められたことで非常に考えが「合理的」になり、「価値の有無」についてこだわる教育を受けてきたからです。

さらにその考えに拍車をかけているのがゆとり世代の部下は生まれた時からの「デジタル世代」であり、簡単に情報や合理的な方法を手に入れる環境にあったことです。

あなたもゆとり世代の部下に仕事の指示をした時に「その仕事やる意味あるんですか?」と返されイラっとした経験はあると思います。

たとえば私たちの世代が当たり前のようにやっていた言葉の意味を調べる時に「分厚い辞書を開いて調べる」ことにたいして、ゆとり世代の部下はスマートフォンで言葉を検索するだけで簡単にそれができてしまうのです。

そんな環境で育ってきているゆとり世代の部下が「合理的」「無駄なことはしたくない」と言う思いになってしまうのも仕方がないと言えます。

そんな「無駄なことはしたくない」ゆとり世代の部下ですが、一方でたとえば東日本大震災の際の現地のボランティアを募集したところ、予想以上にゆとり世代の応募が殺到したと言うデータもあると言います。

これは冒頭にあげたように、仕事をする価値を「金銭」や「出世」と言ったものではなく「社会的価値」「やる意味」に重点をおいているからだと言えます。

つまりゆとり世代の部下はけっして「めんどうくさい仕事をしたくない」のではなく、その仕事が「価値がある」ものと理解すれば、いかにそれが大変だろうと熱意をもって行動するのです。

よって社長や上司のやるべきことは「どんな仕事も最終的に自分たちのお客様のためになる必要なプロセスの1つ」であり、また「さらにその先の社会のためになるすばらしい仕事」であることをストーリーとして語ることが重要になります。

そして逆説的になりますが、このストーリーが語れない仕事があるとしたらそれは「必要のない業務」であり、改善していく必要があるとも言えるのです。

社長や上司はゆとり世代の部下に仕事を依頼する際にはその仕事が「会社の目的=理念を達成するために必要な大事なピースの1つ」であることをセットで説明しましょう。

そうすることで「書類のコピー」と言った一見意味のない仕事も「心から」とは行かなくても「意味がある」ことだと理解し前向きに取りくむべき仕事となっていきます。

5、周囲に支えられながら1歩ずつ成長し、幕府の体制を確立させた「ゆとり世代」の徳川家光

 

今回の「ゆとり世代の部下の心に火をつける」と言うテーマで参考になるのは戦国時代を終わらせ、260年の平和の時代をきずいた徳川幕府の体制を確立させた第三代将軍の徳川家光(とくがわいえみつ)です。

家光は祖父で初代の家康(いえやす)、父で二代の秀忠(ひでただ)の跡を継いで1623年に19歳の若さで第三代将軍に就任しましたが、そんな輝かしいキャリアを持った家光、さぞかし立派な若者だったかと言うと実はそうではなかったようです。

彼は将軍就任時に「わしは生まれながらにしての将軍である」と宣言しているとおり、家康、秀忠がいまだ戦国の戦乱が続いている状況での就任だったのにたいして、すでに体制が確立したかなり恵まれた環境で育ったいわば「おぼっちゃん」、まさに現代で言う「ゆとり世代」の代表のような人だったのです。

さらに彼は生まれながらにして病弱で自分に自信がない少年時代を過ごし、また2歳年下の忠長(ただなが)が非常に出来のよい弟だったこともあり、常に比較されたことが彼の性格を暗いものにして行きました。

そんな彼に対し、父である秀忠や家光付きの重臣たち、そして教育係として常にそばに寄り添った春日局(かすがのつぼね)たちが心がけたのは上記のポイントでした。

秀忠は家光が12歳の時に60名にもおよぶ小姓(年齢がちかい近臣)を付けました。

これは「1人では心もとない家光が少しでも成長してほしい」と言う父の願いでもあったようですが、小姓が付いてから家光は少しずつ性格も明るくなり活発になっていきました。

いつも行動を共にすることで「きずな」も深まり、まさにかけがえのない「仲間」の関係になって行ったのです。

こんなエピソードがあります。

ある小姓の1人が取りかえしのつかない間違いをして小姓を辞めさせられそうになった際、家光は「ならばわしも一緒に出ていく」と強く抵抗しそれを撤回させたと言われています。

非常に「きずな」を感じるエピソードですが、その後その小姓は将軍になった家光を支えていくことになったのです。

また、春日局はどんなに小さなことでも家光ができた時には心からほめたと言われています。

それにより家光は少しずつ自信をつけ次期将軍候補として成長して行ったのです。

そして彼が将軍として独り立ちする大きなポイントとなったのが家康、秀忠が心血をそそいできずきあげた徳川幕府が「日本にとって必要な組織」と言う思いにいたったからでした。

「自分が将軍を努めることは人々のためになる」と社会的価値を見出し、彼は家康、秀忠の事業を引きつぎ、「鎖国の完成」「参勤交代」などを制度化し、徳川幕府の体制を確実なものにしていったのです。

これは今回のポイントをふまえることで、まさに「ゆとり世代」の家光が立派な将軍に成長し大きな使命を果たしたと言えるでしょう。

 

今回は「ゆとり世代の部下の心に火をつける3つの着火ポイント」についてご紹介をさせていただきました。

「つめこみ型」の教育を受けてきた私たち世代にとって「ゆとり世代」の社員や部下は「理解できない」世代であると言えますが、「ゆとり世代の部下がどんな環境で育ち、どんな考えを持つにいたったのか」を理解し接することで彼らの心に火をつけ成長を促進させることができるのです。

ぜひ今回ご紹介した「ゆとり世代の部下の心に火をつける3つの着火ポイント」を参考にしていただき、ゆとり世代の部下と共に成長してまいりましょう。