目次(クリックすると移動します)
- 部下(社員)の成長を加速させる評価の心得、3つのポイント
- 「部下(社員)の成長を加速させる評価の方法がわからない」
- 「部下(社員)が評価にたいして納得していないことが多い」
- 1、部下(社員)を評価する側の経営者(上司)が、絶対にブレない確固たる「思い」「軸」をもつ
- 2、部下(社員)の評価の前に信頼関係のインフラ構築
- ⓵部下(社員)の健康チェックやプライベートの相互理解をふかめる
- ②表彰などを活用して部下(社員)の存在を承認する
- 3、経営者(上司)の「思い」「理念」を軸とした総合的な評価
- ⓵成果評価
- ②能力評価
- ③情意評価
- 4、信頼関係は構築できていたが、「評価軸」が定まっておらずなやみの日々
- 5、信長→秀吉→家康の人事考課で完成した戦のない平和な社会
部下(社員)の成長を加速させる評価の心得、3つのポイント
「部下(社員)の成長を加速させる評価の方法がわからない」
「部下(社員)が評価にたいして納得していないことが多い」
と言った部下(社員)の評価にたいしてのなやみを持ってはいませんでしょうか?
私の顧客である中小企業の経営者や上司からも
「社員(部下)が評価にたいして納得していないと言う声をよく聞く」
「どうしても評価に主観が入ってしまう」
「自身が営業出身のため、売上など目にみえる成果以外の評価方法がよくわからない」
と言った声をお聞きする時があります。
私も会社員時代は一貫してバックオフィス専門で仕事をしていたこともあり、部下の評価には非常に頭をなやませていた時期がありました。
特に部下からの評価の面での不満が多かったのは
「営業の社員ばかり評価が高くバックオフィスは正当に評価されていない」
「バックオフィスは文句言わずにやるべきことをやっていればよいと言う空気がすごい」
と言う不公平感からくるものでした。
たしかに中小企業の経営者は
「創業者をはじめ営業を主としたキャリアの人間がおおく、経験したことがない部門の評価方法がわからない(する気がない)」
と言った人もいます。
企業は業績をあげ発展していくことが使命である以上、営業成績等の直接貢献する成果をより重点的に評価することが本筋です。 しかし、そこにいたるまでには間接的に貢献している社員もおり、この点を総合的に考慮した評価をしなければやがては企業全体の業績に悪影響が出てしまうことは想像にかたくありません。
今回はバックオフィス等の間接部門もふくめた一見みえない成果にたいしても光をあて、
「部下(社員)の成長を加速させる評価の心得、3つのポイント」をご紹介します。
1、部下(社員)を評価する側の経営者(上司)が、絶対にブレない確固たる「思い」「軸」をもつ
部下(社員)の成長を加速させる評価の心得、1つめのポイントは「部下(社員)を評価する側の経営者(上司)が、絶対にブレない確固たる「思い」「軸」をもつ」です。
部下(社員)の評価においてなによりも大事なのは自社の経営理念にもとづいた確固たる「思い」「軸」を連動させることです。
なぜなら企業は「経営理念」を実現するために存在している以上、そのために部下(社員)が努力してだした成果を正しく評価しなければならないからです。 裏をかえせば、たとえ営業がどれほど業績に貢献したとしても、「経営理念を実現するもの」でなければ評価はすべきではないと言うことになります。
企業が存在する目的は「経営理念を実現する」ことであり、部下(社員)の評価もそこに連動していなければならないのです。
これはテレビ等でたびたび報じられる企業の業績にたいする不正等を見れば明らかでしょう。
企業は「ただ業績をのばせばよい」わけではなく、それが社会に貢献する前提でなければなりません。 つまり成果をだすプロセスが重要であり、経営者(上司)の「思い」にもとづいていなければならないのです。
そのために大事なのは
「経営者(上司)のあなたが自社で実現させたいことは何ですか?」
「それを達成するために部下(社員)にはどんな人材になってほしいですか?」
と言う問いに明確な答えを持つことです。
たとえば理念に照らしあわせて
「ただ商品を売るだけではなく、顧客のために心から提案できる人材」と言うことであれば、「商品の知識を正確に把握し、顧客のなやみを引きだせるコミュニケーション能力」と言ったものもふくめた評価対象になるでしょう。
また、「部下を育成しチーム全体での成果をだし、顧客満足度を上げる」と言うことであれば、部下の育成力も評価対象にふくまれることになります。
2つの事例は私の顧客である経営者が実際に経営理念からみちびきだした評価項目です。
いずれの経営者も「1人のカリスマ営業が必要なわけではない、それで経営理念が達成されることはない」と言うところからスタートし、たどりついたものです。
「売上」のような目にみえる「虫の目」の視点だけではなく、大空から全体をみわたすような「鳥の目」でとらえることにより、営業のようなフロントオフィスだけではなく、それをささえるバックオフィスにも評価する項目が増えていくことになります。
そして理念と直結させた「思い」「軸」をなにがあってもつらぬく強い姿勢が経営者や上司には求められるのです。
2、部下(社員)の評価の前に信頼関係のインフラ構築
部下(社員)の成長を加速させる評価の心得、2つめのポイントは「部下(社員)の評価の前に信頼関係のインフラ構築」です。
部下(社員)の仕事の能力や成果を評価するより前にやるべきことは「人として見る」努力をすることです。
なぜなら部下(社員)が「自分のことをよく見てくれている」と思えればこそ、客観的な気持ちで評価(特にマイナス評価)を受けいれることができるからです。
この点についてはそれほど詳細な説明は必要ないでしょう。
人は信頼しているからこそ相手の行動や発言を受けいれます。 よく例としてあげられるのが「人が納得するのは発言の正しさではなく、相手との信頼関係の度合いである」と言うものです。
評価にいたったプロセスについての説明の必要性が前提条件として、部下(社員)は評価がどんなものだったとしても経営者(上司)との信頼関係があれば客観的に受けいれることが可能になります。
では具体的にどのようにして信頼関係を構築して行けばよいかについて顧客先の経営者の事例でご紹介します(いずれも社員数100名以下の中小企業です)。
⓵部下(社員)の健康チェックやプライベートの相互理解をふかめる
経営者のAさんは毎日「部下(社員)が心身ともに健康であるか、なやみをかかえていないかをチェックする」ために足しげく社内をまわっていますが、その目的は部下(社員)のちょっとした変化に気づくためと言うことです。
さらにAさんは部下(社員)のプライベートの情報(家族構成や趣味、休日の過ごしかた等)についても把握するように心をくだいています。
このためにAさんが心がけていることは
「経営者自身が積極的にプライベートを開示する」
ことです。
特にかっこう悪いことや失敗談等は積極的に部下(社員)に話すようにしていると言います。
理由は
「人は心をひらいてくれた相手にたいして、自分からも心をひらく」
からです。
②表彰などを活用して部下(社員)の存在を承認する
経営者のBさんはできる限りの部下(社員)の記念日を把握して、朝礼等の場で称賛する習慣をつづけています。
たとえば「誕生日」「入社記念日」と言ったものです。
Bさんは「存在承認をすることによって成果や行動の評価が可能になる」と言います。
承認には「成果承認」「行動承認」「存在承認」の3つがありますが、根底にあるのが「存在承認」だと言います。 人は「認められている」ことを実感してはじめてよいパフォーマンスが発揮できるのであり、この点から「存在承認」は非常に重要なのです。
お2人の経営者が口をそろえて言うのは、それをくり返しおこなっていくことで、部下(社員)はどんな評価にたいしても不満を持たなくなったと言うことですが、これは経営者と部下(社員)のあいだに信頼関係の構築できたからこその結果と言えるのです。
ぜひお2人の経営者の方法を参考に部下(社員)との信頼関係を構築してみてください。
3、経営者(上司)の「思い」「理念」を軸とした総合的な評価
部下(社員)の成長を加速させる評価の心得、3つめのポイントは「経営者(上司)の「思い」「理念」を軸とした総合的な評価」です。
経営者(上司)は営業部門等の目にみえる成果だけではなく、各部門の役割をふまえた上で総合的な評価をする必要があります。
なぜなら「直接的な成果をあげるまでのプロセスで、それをささえた目にみえない成果」があり、どれか1つが欠けたとしても「売上」と言う成果はでないと言えるからです。
営業には営業部門の、総務や経理、業務等には管理部門の役割、使命があるため、経営者(上司)の「理念」に即した評価を各部門に適用しなければなりません。 企業は全部署が1つの組織・チームとして機能してはじめて成長・発展します。
評価方法には大きく分けて3つの種類があります。
⓵成果評価
「業績目標達成度」「課題目標達成度」など一定の期間内でどれだけの実績を達成できたかを評価する項目
②能力評価
「企画力」「専門知識」など各部門での業務で必要とされる業務遂行能力や習熟度、知識等を評価する項目
③情意評価
「責任感」「協調性」「積極性」など仕事にたいする姿勢や心がまえ、勤務態度など部下(社員)の本質的な点を評価する項目
評価を上記の3つに分け、経営者(上司)の「理念」を軸に評価スタイルを構築します。
中でも特に重要なのは「情意評価」です。
数値化できない「情意評価」での会社への貢献度を重視することで、直接的に成果をだしにくい部下(社員)にも光があたり「認められた」と言う気持ちが更なるモチベーションにつながります。 「売上」と言う最終的な成果を達成するために必要だったプロセスを1つの輪と考え、たとえ目にみえないものであっても努力し成果をだした部下(社員)をふくめて評価しましょう。
たとえば「厳しい状況の中、責任感をもつてやりぬいたバックオフィス部門の部下(社員)」のように、1つのピースがなければ最終的な「売上」と言う成果を達成できなかったと言ったプロセスは沢山あります。
また営業の部下(社員)についても、自分の成果をだすためだけに動く「スタンドプレー」ではなく、チームとして同じレベルの人間を育てたり、または他部署とより連携し、よりよい成果を出せるように努力した等の行動もふくめて評価することが重要です。
企業の「理念」を達成するために必要なすべての業務について、総合的に評価することを心がけましょう。
4、信頼関係は構築できていたが、「評価軸」が定まっておらずなやみの日々
今回のテーマでは、中小企業で部下をもち評価していた私も失敗をした経験があります。
当時の私はバックオフィス部門で5人の部下を受けもつていましたが、なかなか自身の評価にたいして部下からの納得感が獲得できない状況がずっと続いていた時があります。 この時の私は100%とは言わずとも上記の2で紹介したやり方で部下たちの信頼関係はきずけていました。しかし、それでも私の評価にたいして部下は納得していなかったのです。
私自身なやみ「なぜ?」と自問自答をくり返していたところ、ある日、友人と何気なく話していた会話の中で「自分軸」と言うキーワードが出た時に「自分にない点はここではないか」とヒントをえたのです。
たしかに当時の私は直属の上司である社長から折々に下りてくる目標や課題についてこだわるあまり、部下への評価がその時々で変化しブレまくっていたのです。
つまり「理念」「軸」をもっていなかったのです。
そこで私は「本来自部署が会社の理念に照らしあわせ果たすべき役割は何なのか?」をとことん掘りさげて「成果評価」「能力評価」「情意評価」の3つに分けた独自の評価基準をつくりました。
特にバックオフィス部門のため「成果評価」についてはなかなか目にみえる成果をあらわすことができないため、「成果評価」の項目を考えながらより「能力評価」「情意評価」に重点をおいた評価基準をつくり、それを社長に納得してもらうまで主張をし、部下たちとも自部署の役割を共に考えるなかで共有していきました。
更にこの私の動きはあらためて「理念」について全社的に考える機会となり、研修等がおこなわれ、「理念に基づく経営」に移行していくと言う副次的な効果も生みだしたのです。 結果、私自身が部下にたいしての評価基準にブレがなくなり、確固たる「軸」をもつて評価することができるようになりました。
そして部下も私の会社の「理念」に直結した「評価軸」を納得して受けいれてくれ、やる気にみち成長意欲の高い部門へと変化させることができました。
私の失敗の事例からも「はじめに絶対にブレない評価軸をもつ」ことが重要だと言えるのです。
5、信長→秀吉→家康の人事考課で完成した戦のない平和な社会
今回のテーマについて参考になる戦国武将と言えば戦乱のつづく戦国時代を終わらせた織田信長、豊臣秀吉、徳川家康のいわゆる「戦国の三英傑」です。
3人については、たびたび私のコラムに登場しているおなじみの武将たちですが、それほど多方面で現代にも応用できる施策をおこなっていると言うことでご了承ください。
信長、秀吉、家康の人事については、今回の3つのポイントを順々に加味しながらたどっていったことで平和な社会を実現させた言わば「リレー方式」と言えます。
⓵信長は天下統一にむけての経営理念である「天下布武」をかかげ、「思い」「軸」が最後までくずれることはありませんでした。
家臣を評価する時は「天下布武を達成するために必要な成果」であるかをつねに意識したことで、家臣も共に理念を共有し達成のために必要な成果をだすことにまい進しました。
②「天下布武」の道半ばでたおれた信長の遺志を受けつぎ、秀吉も「天下布武」の名のもとに天下統一をめざし全力でかけぬけました。
この際に秀吉が「思い」「軸」にくわえて取りいれたのが「組織力」と言う組織の力です。
彼は家臣の気持ちに寄りそうことに非常にたけており、家臣一人ひとりの「価値観」や「大切にしているもの」を把握していたと言います。 彼は主君である信長が達成できなかった天下統一をなしとげ、長きにわたった戦乱の時代を見事に終わらせたのです。
③信長・秀吉の後を受けた家康の評価はさらに進化していきました。
「関ヶ原の戦い」に勝利し盤石の体制を確立させた家康は本格的に国づくりに着手していきます。
世の中は平和になったことで家康がすすめたのは、領民が安心して暮らせる町づくりや生活していくために必要なインフラ整備等でした。
このために家康はバックオフィス部門の専門家である家臣を多数登用していきます。
たとえば利根川の治水工事に活躍した伊奈忠次(いなただつぐ)や江戸庶民の飲料用として神田上水を建設した大久保忠行(おおくぼただゆき)、また日本ではじめて本格的な貨幣である小判をつくり経済を安定させた後藤庄三郎(ごとうしょうさぶろう)等がいます。
彼らは現在の営業にあたる戦場で手柄をたてることでの評価ではなく、知識やスキルが幕府の機構をささえる成果をあげたとして正当に評価されたのです。
これは家康が目にみえる成果だけではなく、幕府の足もとをささえる「縁の下の力もち」の人材の直接的な成果ではないものについても公平に見ていた事例と言えるでしょう。
信長・秀吉・家康の連続した評価体系によって日本は安定の時代をむかえたのです。
今回は「部下(社員)の成長を加速させる評価の心得、3つのポイント」についてご紹介をさせていただきました。
評価する側である経営者や上司、また評価される側の部下(社員)も人間であるため、かたよった感情が入ってしまったり、不公平感を感じてしまうことは少なからずおきてしまいます。
この点を冷静に客観的にみとめ、今回のポイントにもとづいた評価を少しずつでも心がけて行くことによって、正しい評価をしていくことは可能になり、それが結果的に企業の成長・発展につながっていきます。
ぜひ今回ご紹介した「部下(社員)の成長を加速させる評価の心得、3つのポイント」を参考にしていただき、部下(社員)の成長を加速させてまいりましょう。