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部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方8選
「こっちが悪いのは分かるけど、なぜそこまで言われなきゃならないんだ!」
「改善しなければいけないのは分かるけど、どうにもやる気がおきない!」
もしかしたら上司(経営者)であるあなたから叱られた部下(社員)はそう思っているかも知れません。
前回のコラムでは「部下(社員)が納得して改善を始める叱り方」をご紹介しました。
まだお読みでない方は下記のコラムをご参照ください。
今回は逆の「部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方」についてご紹介します。
1、叱るべき「外面」と叱ってはいけない「内面」
はじめに前回のコラムでもご紹介した、上司(経営者)が部下(社員)を叱るべき「範囲」についておさらいしましょう。
人は「外面」と「内面」を持っています。
「外面」-行動や結果、態度と言った客観的事実
「内面」-人の心の内側のことで、人格や考え方、価値観、信念など
この二つの中で、仕事のミスがあった時に叱るべきなのは客観的事実の「外面」のみとなります。
なぜなら「内面」は人が生きてきた環境や経歴などによって形成された根幹を成すものだからです。
よって、存在そのものを否定する「内面を叱る」行為は、部下(社員)の心を閉ざすだけではなく、信頼関係を完全に破壊する原因にもなってしまうのです。
上司(経営者)が叱ることで改善をうながす範囲は、客観的事実である「外面」のみであり、「内面」にまで踏みこまないように気をつけましょう。
2、部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方
ここからは、上記の「外面」「内面」について考慮しながら「部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方」をご紹介します。
⓵人前で叱る
「人前で叱る」ことは、部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方です。
なぜなら自分が叱られる姿が社内にさらされることは、部下(社員)のプライドを深く傷つけることであり、内面の否定につながるからです。
それにより起こることは同僚やその本人の部下たちからの「人格」や「考え方」についての論評や根も葉もないうわさ話等であり、ただでさえ上司(経営者)から叱られモチベーションが下がっているにも関わらず、更に恥ずかしい思いもすることから叱られた部下(社員)に深刻なダメージをあたえます。
これはあなたにも経験があるのではないでしょうか?
中には「見せしめ」として一人の部下(社員)を人前で叱ることで「周囲へのメッセージ」を発信する上司(経営者)がいますが、たとえこれをやったとしても誰も前向きな気持ちになることはありません。
叱られた本人は上司(経営者)との信頼関係にヒビが入りますし、周囲でそれを聞いていた部下(社員)には「自分もミスが発覚したらあんな恥ずかしい思いをさせられるのか」と言う思いをいだかせ、最悪な場合ミスをかくす行為に発展します。
よって、部下(社員)を人前で叱ることはやめましょう。
②発言をさえぎる、言い訳を封じる
「発言をさえぎる、言い訳を封じる」ことは、部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方です。
なぜなら発言を認められないと言うことは、叱る側の上司(経営者)の中にすでに答えがあって、それを押し付けることしか考えていない心の内を部下(社員)が感じ取り、また自分の心の中にある考えをすべて吐きすことができないため、新たな考え等を受け入れる容量が生まれないからです。
叱る目的は上司(経営者)の思い通りに部下(社員)を動かすことではなく、「一緒に考え、より良い改善策を生み出していく」ことです。
よって、上司(経営者)側がいかに正しい改善策を持っていたとしても、部下(社員)に能動的に改善策を考えてもらうことが必要になります。
人は押し付けられたものよりも、自分で必死に考えた改善策のほうがより責任を持って行動することができるのです。
また、心の中を空っぽにすることは「コップの水を減らす」ことに似ています。
水が満杯に入っているコップに新たに水を入れるためには、一度コップを空にしなければならず、それは人の心も同じなのです。
よって、上司(経営者)は自分の考えを受け入れてもらうために、まず部下(社員)の考えや言い分をすべて聴いて心の中を空っぽにすることを心がけましょう。
③理詰めで説教する
「こちらが正しい」とつい思ってしまい「理詰めで説教する」ことは部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方です。
なぜなら「叱る」ことは上司(経営者)の正しさを証明する場ではなく、一緒に考え、より良い改善策を生み出す場であるからです。
あなたも「正しいことを言わねば分からないだろう」と自分の正論を重ねた経験はありませんか?
それをやられてしまうと、ただでさえ仕事でミスをして委縮している部下(社員)の心を更に委縮させてしまいます。 自分が間違っていることをつきつけられ、まさに完膚なきまでにたたきのめされるのです。
上司(経営者)は自分の正当性を証明できて満足かも知れませんが、その状態の部下(社員)がより良い改善策を考えることは不可能です。
上司(経営者)は「叱る目的」について正当性を持っていたとしても、決してそれを使って部下(社員)を執拗に追いこむことのないように注意しましょう。
④他の部下や同僚と比較して競わせる
奮起をうながそうと「他の部下や同僚と比較して競わせる」ことは部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方です
なぜなら周囲と比べられてうれしい人はいませんし、そもそも他の部下や同僚とは年齢やスキル、キャリア等がまったく同列でないことから比べても意味をなさないからです。
比較するのではなく、部下(社員)がその仕事について成果を出している人の行動を参考にできるようにそれとなく伝えることは良い方向にはたらくでしょう。 しかしその際も特定の人物だと分からないように一例として紹介するのがベストです。
例えば「私の友人のAさんが他社で君と同じ立場で仕事をしているけど、こんなやり方で結果を出しているよ」と叱られている部下(社員)がその人物を特定できない状態が良いのです。
なぜなら「知らない人では主観的な感情が起きず、劣等感を感じない」からです。
人はより近い人と比べられると、同じ空間にいることで優劣がはっきりと周囲に分かってしまいどうしても冷静・客観的に分析することはできなくなってしまう傾向があります。
よって、基本は人と比べることで改善を目指さない、もしくは主観的な感情をいだかせない状態で、参考になるヒントを提示するにとどめましょう。
⑤おどす、脅迫する
「おどし」「脅迫」と言った行為は、もちろん部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方です。
これについては理由を述べるまでもないでしょう。
おどし、脅迫されて前向きに努力する部下(社員)はいませんし、現代では最悪な場合「パワハラ」で訴えられる可能性もあります。
ここには「大声を出す」や「暴力をふるう」などの行為のほかに
「今度同じことやったらボーナス減らすよ!」
「今、リストラ候補の名簿を作っているんだよね!」
と言ったにおわせの発言、いわゆる「言葉の暴力」もふくまれます。
部下(社員)を「叱る目的」は「共に考え、より良い改善策を生み出す」ことであり、決して社内での力関係を誇示することではありません。
よって、上司(経営者)の力を振りかざす発言や行動はやめましょう。
⑥過去をむし返す
ある出来事にたいして叱っている時についイライラしてしまい、「過去のすでに終わったことをむし返す」ことは部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方です。
なぜなら部下(社員)にとってはすでに解決したことであり、また一度に複数のことについて叱られると混乱するからです。
これはサラリーマン時代の自分もついやってしまっていたNGの叱り方の一つです。
ついつい叱っている最中にイライラが爆発してしまい、「そう言えば先日もこんなミスやったよね?」「~についても全然改善されていないじゃないか?」と今叱っている目的を忘れて過去の出来事に飛び火してしまい、結局何について叱っていたのかがあいまいになり改善策を決められずに終わってしまった経験がありますが、これはお互いにとって良くないことです。
前回のコラムで「叱る時は事前に目的を決めてのぞむ」ことをご紹介しましたが、叱る目的が複数に派生すると結局いずれも目的を達成できずに終わってしまいます。
上司(経営者)側から見ても「叱る」行為は非常に神経を使うことから考えても、叱る項目は一つにしぼったほうが集中でき、部下(社員)からしても「先日解決したことをまたむし返すのか!」と嫌気がさしてしまい、本来叱られていることに対しても前向きに改善する気持ちが無くなってしまいます。
よって、叱る際には目的を一つにしぼりその改善策を生み出すことに集中する、また複数のことを叱る際には場を分けましょう。
今回は過去の出来事についてお話しましたが、これは現在・未来でも同じです。
部下(社員)と話をする際には話題を一つにしぼることを心がけましょう。
⓻茶化しながら叱る
「茶化したり、冗談を言いながら叱る」ことは部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方です。
なぜなら上司(経営者)の本気度が部下(社員)に伝わらず、目的である「改善策を生み出す」ゴールまでたどり着かないからです。
今回のコラム、後半になるほど自分の経験からも冷や汗が出るものが多いのですが、これについても良くやっていました。
自分も弱い性格から「緊張感に耐えきれない」「深刻にならない状態で軽く注意したい」と言った気持ちがつい出てしまい「先日も同じことやったじゃない。ほんと頼むよ~」と半分ふざけながら叱っていた時期がありますが、その結果は、部下(社員)が叱られていることについて本気に受け止めず、改善されることはなかったのです。
「叱る」と言う行為は大げさですが上司(経営者)にとってはある意味「命がけ」であり、真剣にのぞまなければならない場であると同時に、部下(社員)も叱る側の本気度を感じることで「このままではダメなんだ」と改善する方向に動いていくのです。
ポイントは「茶化しながら何度も叱る」のではなく、「たった一回を真剣に叱る」こと
部下(社員)のことを本気で思い、真剣に叱ることを心がけましょう。
⑧人を介して間接的に叱る
「自分の上司や同僚の力を借りて間接的に叱ること」は部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方です。
理由は上記⓻とほぼ同じですが、「叱るべき部下(社員)に本気度が伝わらない」「間接的に伝えるだけでは、目的である改善策を生み出すところまでたどり着かない」からです。
これも真剣に叱ることによって「うらまれたくない」「責任を負いたくない」と言う消極的な気持ちからついやってしまう傾向がありますが、それによって叱られる側の部下(社員)が感じる気持ちは主に二つ
「上司(経営者)はそんなに怒っていないんだ、ラッキー」
「直接言わずに人づてと言うことは、自分は信頼されていないんだ!」
と言う感情です。
「事象が軽く見られる」「信頼関係がうすまる」原因になり、結果的に叱る目的である「改善策を生み出す」ところまでたどり着くことはありません。
1979年にノーベル平和賞を受賞したマザーテレサの有名な言葉に「愛の反対は憎しみではなく無関心である」と言うものがあるように、叱られることは嫌であっても本人から直接話を聞かずに間接的に人から聞くと言うのは部下(社員)からすれば非常に疎外感を感じることであり、また改善の重要性としてはかなり下がってしまうのです。
よって、部下(社員)を思い本気で改善を促したいのであれば、決して人まかせにせず、自分の言葉で叱ることを心がけましょう。
今回は「部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方」についてご紹介しました。
「NGの叱り方」をついやってしまう理由は「部下(社員)と真剣に向き合うことをさけたい」「自分の力を誇示したい」と言ったものが上司(経営者)の心にあることが原因と言えるでしょう。
叱る側の上司(経営者)が今一度考えてみることは「なぜ叱るのか」と言う「叱る目的」を明確にすることです。
「叱る目的」はくり返しになりますが、「一緒に考え、より良い改善策を生み出す」ことであり、その点がしっかりと根底にあれば今回のNGの叱り方は自然と無くなっていくでしょう。
ぜひ、今回ご紹介した「部下(社員)のモチベーションを下げるNGの叱り方」を悪い事例として参考にしていただき、「部下(社員)と共に考え、より良い改善策を生み出す叱り方」を実践してまいりましょう。