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部下(社員)の性格に即したタイプ別叱り方5選

 

「自分中心で、聞く耳を持ってくれない!」

「素直に話は聞くが、改善しようとしない!」

「ネガティブな反応をしてくるので叱りにくい!」

 

あなたはこう言った部下(社員)の性格や反応にたいして、どう叱ったら良いか分からずになやんでいませんか?

原則は前々回にご紹介した「部下(社員)が納得して改善をはじめる叱り方7つのステップ」にそって叱ることが重要ですが、中にはひとクセあるタイプの部下(社員)がいるのも事実であり、上記のようなどうして良いか判断にまよう場合はもう一歩踏みこんで一工夫する必要が出てきます。

そこで今回のコラムでは前々回の「部下(社員)の正しい叱り方」、前回の「部下(社員)のNGの叱り方」をふまえて、「部下(社員)の性格に即したタイプ別叱り方」をご紹介します。

前々回、前回のコラムをお読みでない方は下記をご参照ください。

前々回→https://onl.la/EqcDmLi

前回→https://onl.la/GjYRTm6

 

1、「内面」に配慮しながら叱るのがポイント

前々回、前回からのくり返しになるので要点のみにとどめますが、人は「外面」と「内面」を持っています。

「外面」-行動や結果、態度と言った客観的事実

「内面」-人の心の内側のことで、人格や考え方、価値観、信念など

これまで上司(経営者)が叱るべきは客観的事実である「外面」のみとくり返し述べてきましたが、今回の「タイプ別」ではややもすれば完全に「内面」を攻撃することにもなりかねないため、その点は充分に部下(社員)の性格を尊重することを心がけてまいりましょう。

 

2、部下(社員)の性格に即したタイプ別叱り方

 

⓵言い訳してくる部下(社員)の叱り方

叱りはじめるとすぐに「それは同僚の~さんが悪い」と言い訳してくる部下(社員)がいますが、そう言った部下(社員)には今回の「叱る目的」とはちがうことを説明し、相手の言い訳を分けて話すようにします。

なぜならこのタイプの部下(社員)は「他に視点をうつすことで要点をぼかす」傾向があるからです。

前々回のコラムでも述べましたが、「叱る目的」は一つにしぼり、複数の目的を一つの叱る場で同時に進めないことが原則になります。                                                       この場合、部下(社員)から新たな視点での反論が出てくることで、本来達成すべきだった「叱る目的」から話題がズレてしまい、結果的にどれも改善策までたどり着かずに終わってしまうことが良くあります。

このタイプの部下(社員)は、仕事は普通にできますが、それが高じて自分なりのこだわりを持ちすぎることがあるため、まずはそこ(外面)を承認しましょう。

具体的には、言い訳にたいして「そうなんだね」とはじめにしっかり受けとめること、また「なるほど、そんな経緯があったんだね」と要約することで、部下(社員)は納得感を高め、冷静さを取りもどしますので、そこまで行ったら「君の主張したことについてはまた後で話そう」と本来の「叱る目的」と切りはなし、改善策を一緒に考えましょう。

その後はあらためて、切りはなした部下(社員)の反論についてもあらためて改善策を考える場を設けることが必要になります。

 

②自分の経験・スキルにこだわる部下(社員)の叱り方

「自分はずっとこのやり方でやってきた」と言う主張を繰りかえすも結果がともなっていない部下(社員)がいますが、そう言った部下(社員)には今までの経験・スキルに敬意をはらいながら、それをふまえた新たな方法を共に考える提案をします。

なぜならその部下(社員)が年月をかけてつちかってきた経験・スキルは今後にも活かせるものであり、真っ向からそれを全否定する(内面の否定)ことは部下(社員)との信頼関係を崩壊させることにつながるからです。

こう言った部下(社員)は一社での一貫した勤続年数や一つの職種で働いてきた人に良く見られるケースです。特徴として、彼らはそれにたいして絶対的な自信を持っていることですが、今まではその経験やスキルによって結果が出ておりノウハウとして使えたかも知れませんが、状況の変化により適さなくなっている場合も多いようです。

とは言え会社や部署にとって、部下(社員)のその分野での経験やスキルは貴重な資源ですので、彼には引きつづき現状のポジションでそれを活かしてもらいつつ、徐々に新しいやり方を取り入れることができるようにうながしていきましょう。

具体的には先ほども述べましたが全否定して一気に変えていくのではなく、「~さんの経験やスキルが若い部下(社員)には生きた教材になっていて助かっています」と現状の貢献度を素直に承認します。

⓵でも述べましたが、人は自分の行動や発言を受け止めてもらうと冷静になりますので、承認をおこなった上で現状結果が思わしくないことを事実として確認し、それを改善するために一緒に新しい方法を考えることを提案します。

その部下(社員)のやり方をより進化させた改善策を生み出すことで部下(社員)も引きつづき高いモチベーションを持ってその仕事に取りくめるため、おせじ等ではなく、相手の貢献度をしっかりと認め、その後により良い改善を生みだす二段階の接し方を心がけましょう。

 

③素直だが改善する気がない部下(社員)の叱り方

叱りはじめると「自分が悪かったです」「今度から気をつけます」と早めにその場を切りあげようとする部下(社員)がいますが、そう言った部下(社員)には改善策を5W1Hなどでより具体的に落とし込み、約束をします。

※5W1H-「When:いつ」「Where:どこで」「Who:だれが」「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」

なぜならこう言った部下(社員)は具体的に落とし込まないと、いつまで経っても改善しないからです。

このタイプの部下(社員)を私は多く接した経験があります。

当初は「今後気を付けます」と言うので「じゃあ気を付けてね」と簡単に切りあげていたのですが、その後一向に改善されることはありませんでした。                                                                なぜなら今回の要点である「叱る目的」を達成しておらず、具体的な改善策を生み出していなかったからです。

それで毎回イライラしていたのは私のほうだったのですが、このタイプの部下(社員)は非常に話の流れを自分に引きよせるのがうまいのではまらないことが重要です。

前回述べた私のような「叱ることが苦手」な方は特に「早く終わらせたい」と言う気持ちが心のどこかにあるため、「渡りに船」で「まあいいか」とつい流されてしまいがちなので注意しましょう。

このタイプの部下(社員)は今回ご紹介する他のタイプ以上により具体的にその時の状況や原因などを確認し「つまりこう言うことだね」と要約した上で、「じゃあどうすれば良いと思う?」と改善策を一緒に考え生み出して行きますが、ここで終わってしまうと一向に改善されないので、「いつまでに」「どのように」と言ったより具体的な点まで落とし込んでその場を終わることが重要になります。

更にこれも前回述べましたが、このタイプの部下(社員)と話す時には、内容を「メモとして残す」ことが必須になります。                                                  これも「言った」「言ってない」の水かけ論にならないための対策です。

気を付けなければいけないのは前回の「NGの叱り方」でご紹介した「理詰めで叱る」形にならないことです。                                                                              「自分の正当性を主張する」のではなく、客観的事実をより具体的にしていくことに集中しましょう。


④自虐的になる部下(社員)の叱り方

叱りはじめると必要以上に自分を責めたり、中には泣いてしまったりする部下(社員)がいますが、そう言った部下(社員)には変に同情することはせずに冷静になるまで待ち、その後、客観的事実に基づいて良い点を承認します。

なぜなら部下(社員)の反応にたいして「申し訳ない」と言う態度を示すことは、今やっている「叱る」行為がまちがっていると言う印象を与えてしまうからです。

私も多くの女性の部下(社員)をあずかりましたが、その中に数名叱るとすぐに泣きだす部下(社員)がいました。

はじめ、それをやられた際には、「自分がものすごく悪いことをしている」と言う思いにかられ、つい「申しわけない」とあやまり即座に叱るのを切りあげてしまったりしていましたが、それをやっても結局何の解決にもならず、更に叱る場を途中で打ち切ったりしてしまうと気まずさから再度話す場を持つことができずに終わってしまうことが多かったため、その後は冷静に対処するように心がけました。

叱っている部下(社員)が「私が悪いんです」と自虐的になっていたり泣いてしまったりしている時は、こちらが冷静になり相手の気持ちが落ちつくまで時間を取ることが効果的です。

「自分を責める」と言う行為は、裏を返せば部下(社員)が「叱られていることにたいして真摯に受け止めている」と言うことなので、相手が冷静になればその後の話し合いを継続することは可能になりますが、この時の部下(社員)は現状「自分が悪い」と言う思いに固まってしまっているため、この状態で一緒に改善策を考えたとしても、なかなか相手から前向きな提案が出てくることは厳しい状態です。

よって部下(社員)が前向きな気持ちになれるように今回の一連の流れの中で良かった行動を承認します。

「でも~の行動はすごく助かったよ」「この点は今後も続けてほしいな」と言った形になりますが、それ以外にも「物事を逆からとらえ直す」と言う方法があります。

それは部下(社員)が「自分が悪い」「欠点」と思っている行動を逆からとらえてみると「良い点」に変化すると言うことです。                                                                例えば「仕事がおそくて期限に間にあわない」ことを部下(社員)が欠点だと思っているとしたら、それは逆を言えば「慎重でミスが少ない」と言う良い点に変えることができます。

それをすることによって落ちこんでいる部下(社員)に「良いことでもあるんだ」と気づいてもらい、前向きに物事を考える状態にもどしましょう。

今回のタイプは、くり返し述べている「外面」と「内面」において、部下(社員)が自身で「内面」までを否定している状態ですので、上司(経営者)は部下(社員)が「外面」の改善に集中できるようにみちびく必要があるのです。

ここまで来てはじめて部下(社員)に「改善策を考えてもらう」ことが可能になります。

 

⑤プライドの高い部下(社員)の叱り方

 

自分に自信を持っているプライドの高い部下(社員)については、今までのタイプ以上に客観的事実(結果)のみを見て、必要以上にアドバイスをしないようにします。

なぜなら叱る側の上司(経営者)から必要以上にアドバイスを受けることは、彼らにとって非常に苦痛であり耐えられないからです。

正直のところ、ここまでの4つのタイプとくらべてこのタイプの部下(社員)が一番接するのが大変(端的に言えばあつかいにくい)でしょう。

自分もこのタイプの部下(社員)と接してきましたが、具体的な改善策に踏みこめば踏みこむほど部下(社員)の気持ちは離れて行き、その結果最終的にたどり着いたのは「客観的事実(結果)のみを見る」と言うことでした。

このタイプは根気がいりますが、上司(経営者)が責任を取れる範囲で部下(社員)に仕事をまかせることがベストです。                                                                                      もともと自主性があるため、部下(社員)自身でくり返し改善策を考えることで「叱る目的」にたどり着くことが重要になります。

そんな中、前もって「改善ポイント」を把握している上司(経営者)がやるべきことは、ポイントを指摘するのではなく「確認」と言う行為に転換させて気づかせると言うことです。

×-「ここが間違っていると私は思う」

〇-「ここが気になるのでもう一度確認してくれるかな?」

これもプライドの高い部下(社員)を追いこまない接し方の1つです。

つまり、「上司(経営者)に間違いを指摘された」のではなく「再確認した結果、自分で改善ポイントを見つけた」と言う形にするのです。

更に言えば、これはテクニック論になってしまいますが、確認するポイントは複数に分けて依頼することで「その中の1つが間違っていた」と言う形になるため、部下(社員)の顔をつぶすことにはなりません。

「そこまでやる必要があるのか?」と言う考えもあるかと思いますが、「叱る行為」はプライドをつぶすことが目的ではないため、上司(経営者)は部下(社員)プライドを信じ、自主性を承認し、フォローにまわると言う形をとりましょう。

 

今回は「部下(社員)の性格に即したタイプ別叱り方」についてご紹介しました

今回ご紹介したタイプの部下(社員)はひとクセあり、叱る上司(経営者)側も大変だと思われますが、基本的には前々回ご紹介した「部下(社員)が納得して改善をはじめる叱り方7つのステップ」を進めながら、今回の事例を参考に叱り方を加えることで「叱る目的」までたどり着くことは可能になります。

くり返しになりますが、「叱る目的」は結果や客観的事実などの「外面」を改善することであって、部下(社員)の性格や価値観などの「内面」までを変えるものではないことを今一度確認してまいりましょう。

ぜひ、今回ご紹介した「部下(社員)の性格に即したタイプ別叱り方」を参考にしていただき、「部下(社員)と共に考え、より良い改善策を生み出す叱り方」を実践してまいりましょう。